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リアクター積分テストWGメンバー各位、
大変遅れましたが、リアクター積分テストWG議事録(案)を送ります。


リアクター積分テストWG議事録(案)

日時 : 2000年2月17日(木) 13:30-17:30

場所 : 霞山会館 「かざん」

出席者 : 池田一三、田原義寿(以上三菱)、石川眞、横山賢治(以上サイクル機構)、岩崎智彦
(東北大)、馬野琢也、山本宗也(以上東芝)、金子邦男(総合技術情報機構)、亀井孝信(高速炉エ
ンジニアリング)、佐治悦郎(東電ソフトウェア)、瑞慶覧篤(日立)、北田孝典(竹田代理、大阪
大)、山本徹(原子力機構)、秋江拓志、飯島進、大井川宏之、佐々敏信、高野秀機、中川庸雄、
中島健、中野佳洋、長家康展、長谷川明(以上原研)
欠席者 : 三田敏男(日立)、鷹見益夫(CRC)、竹田敏一(大阪大)

配布資料 :
資料 11-1  リアクター積分テストWG議事録案 (秋江)
資料 11-2  JENDL-3.3の現況 (中川)
資料 11-3  Measurement and Analysis of Np-237(capture and fission) & 
Am-241(fission) at Kyoto University Critical Assembly (岩崎、北田 他)
資料 11-4  JENDL-3.2による「常陽」性能試験・運転特性データの解析 (横山)
資料 11-5  OECD/NEA ADSベンチマーク解析 (佐々)
資料 11-6  MOX炉物理試験計画MISTRALの解析 (山本徹)
資料 11-7  W, Er, ThO2のドップラー測定と解析 (中野 他)
資料 11-8  MVPコードによるTRACY実験解析 (中島、金子)

議題 :
1) 前回議事録の確認 (資料 11-1)
   前回会合以降の展開として、FCA炉心のベンチマーク仕様のまとめが学会誌の本年2月号に掲
載されたこと、PERKEYコードの3次元X-Y-Z体系計算における整合性が確認されたこと、フラン
スのERANOSシステム(2000群)計算でもZPPR-9のドップラー反応度のC/E値は0.95であったこと
などが報告された。

2) JENDL-3.3の現況 (資料 11-2)
   主な編集方針として、フォーマットはENDF-6のみとする、Reich-Moore形式共鳴パラメータ
を多用する、非分離共鳴パラメータの特殊なオプション(LSSF=1 : 共鳴パラメータは遮蔽因子
の計算のみに用い、断面積はFile3に与える)を用いる核種がある(235U)、元素の各同位体の共
鳴領域がばらばらの場合その元素の天然組成に対応するデータを作成しない(Cr, Fe, Ni等)、
File5での表形式スペクトルデータ内挿法を変更、File6による二重微分断面積表現の採用、等
が説明された。主要重核種については、共鳴パラメータの改訂、核分裂スペクトル等の再計
算、核分裂断面積の同時評価、direct/semi-direct captureの計算、遅発中性子データの改訂
を行った。例えば、JENDL-3.2で問題点が指摘されていた235Uの場合、Leal et al.の共鳴パラ
メータとJENDL-3.2より硬めの核分裂スペクトルを採用することにより、問題点を改善できる。
また、235Uのν値も評価しなおしたが現在再検討中である。主要重核種以外のMA等のデータも
改訂するが、FP核種についてはほとんど変更はない。Er等新しい核種もいくつか追加される。
主要核種のデータ編集は3月末までに終了させる。その他の核種のデータ評価・編集とベンチ
マークに基づくデータの改良を2000年度に行い、2001年3月の公開を予定している。
   特に重核種についてかなり大幅な改訂となったがJENDL-4ではなく-3.3としたのは、ライブ
ラリの性格上はあくまでもJENDL-3.2の延長であるからとのこと。今回の改訂ではフォーマット
の変更により、特にFile5、File6の扱いや、非分離共鳴パラメータのLSSF=1オプションに関す
る各種処理コードの対応が問題となる可能性がある。

3) KUCAにおけるNp-237とAm-241の反応率比測定と解析 (資料 11-3)
   異なるスペクトルを持つ5種類のKUCA炉心における、237Npの中性子捕獲と核分裂反応率、
及び241Amの核分裂反応率測定と解析が行われた。JENDL-3.2、ENDF/B-VI.5、JEF-2.2を用い
たTWOTRANによる解析では、237Np/235Uと241Am/235U核分裂反応率比はいずれの核データを用
いても実験値を過少評価する。237Np核分裂率の場合はJENDL-3.2が他2つのデータよりも
C/E(〜0.93)が良いが、241Amの場合はJENDL-3.2は20%ほど実験値を過小評価し、JEF-2.2を用
いると最も予測精度が高い(C/E〜0.9)。237Npの場合は40eV付近の共鳴領域の断面積に核デー
タライブラリ間で差異が見られたが、241Amでは1eV以下の低いエネルギー領域の共鳴とその周
辺の断面積が重要である。
   241Amの捕獲反応率の測定ができなかったのは、サンプル量が少なく反応率自身が小さい
上、生成する242Amと242mAmへの分岐比等の問題から生成核の放射線を測定することによる反応
率の予測が困難であるため。また、243Am等の核種は使用許可そのものがない。

4) MOX炉物理試験MISTRALの解析 (資料 11-6)
   高減速MOX軽水炉心の炉物理試験としてフランスCEAカダラシュのEOLE臨界試験装置で行わ
れているMISTRAL計画の紹介が行われた。今年7月までの予定で、水素/重核原子数比(H/HM)=5
〜6のUO2炉心と3つのMOX炉心計4体系において、臨界量、出力分布、スペクトルインデックス、
温度係数、ボイド反応度、各種吸収材やウォーターロッド等の反応度価値測定を行う。またこ
れに続いて高減速MOX-BWRの炉物理試験を目的としたBASALA計画が予定されている。H/HM約5の
運転時モックアップ体系とH/HM約9の冷温時モックアップ体系の実験を2年間ほどの間に実施す
る。
   MISTRAL炉心の解析をJENDL-3.2を用いたSRAC及びMVP計算により実施した。またその結果を
以前行われたEPICURE計画の炉心(H/HM=3.7)と比較した。その結果、MVPによる実効増倍率は実
験を0.4〜0.7%過大評価し、SRAC及びMVPによる出力分布は実験値と比べ平均自乗差で1〜2%程
度であった。これらの結果は、PHYSOR 2000で発表予定。
   MISTRAL、EPICURE両炉心ともJENDL-3.2は増倍率をやや過大評価するが、同じMOX炉心でも
TCAでは実験との一致が良い。ただ、TCA炉心の場合Pu富化度は約3%とMISTRALやEPICUREの7%と
比べて低く、燃料の密度も小さいため条件はかなり異なる。MISTRAL炉心で増倍率の過大評価傾
向がEPICURE炉心よりも大きくなっているが、EPICURE実験の1993年当時からのPu組成の経年変
化による241Am蓄積の影響も考えられる。

5) MVPコードによるTRACY実験解析 (資料 11-8)
   TRACYの炉内構造物等の臨界計算への影響を、MVPコードにより検証した。単純な円筒型炉心
の簡素モデルから、底面の温度計、給廃液ライン、実験用温度計、マイクロ波液位計、圧力
計、fission chamberを炉心モデルに加えることにより、JENDL-3.2を用いた時の実効増倍率
は、実験を約0.7%過大評価するというSTACYと同程度の結果が得られた。また、この正確な体系
モデルと等価な円筒型簡易モデルの作成を試みた。給廃液ラインを無視し、炉内構造物をウラ
ン溶液に希釈させ、その構造物の割合を調整することにより、正確な体系モデルをほぼ再現で
きる等価モデルが得られた。
   簡素なモデルは増倍率が大きいが、構造材を無視することによる燃料量の増加の効果は小さ
い。周りの壁材、床面等の影響はSTACYについて評価している。計算結果の傾向はSTACYと同様
であるので、ベンチマーク炉心として考えるなら、タンクが厚く構造物も複雑なTRACYより
STACYの方がよい。

6) JENDL-3.2による「常陽」特性解析 (資料 11-4)
   炉定数調整計算のための積分データとして、常陽MK-I炉心の性能試験・運転特性データの解
析を行った。JUPITER実験解析で用いてきた手法にいくつか変更を加え、臨界性、Naボイド及び
燃料置換反応度、燃焼係数の解析を行った。特に、燃焼係数は実機の常陽で新たに加わった核
特性である。増倍率は、JUPITER実験解析同様0.5%ほどの過小評価でありMVP計算結果とも傾向
は一致する。Naボイド反応度は15〜30%の過大評価であった。過大評価傾向はJUPITER実験解析
でも見られたが最大5%程度だった。燃料置換反応度は測定値と良い一致を示す。燃焼係数のC/E
値は約10%の範囲でばらついた。今後、MK-II炉心や照射後燃料の組成測定データの解析等を予
定している。
   六角型集合体を円筒化したモデルを用いているが、MVPとの比較では単ピンセル計算と集合
体計算との2ステップモデルよりもよい結果が得られた。このモデル化については次回(愛媛大)
の学会で報告予定である。燃焼係数のC/Eが、スクラムにともなう制御棒デラッチの前後で大き
く異なるのは、デラッチ後の測定点が少なく反応度変化の勾配を求める精度が低いためと考え
られる。燃焼係数のC/E値のばらつきに関してはランプ化FPを用いたことの影響もあり得るが、
詳細FPチェーンの個々の核種に対する定数調整は困難。Naボイド反応度の評価では、炉心アド
レス"0"(炉中心)と"1F1"(中心から1列目)のそれぞれの集合体の反応度は過大評価するのに対
し、"0+1F1"では過小評価となった。計算では2つの領域の反応度に加算性が見られるが、実験
値では加算性が成立していない。実験値を中心に検討が必要である。

7) OECD/NEA加速器駆動消滅炉システムベンチマーク解析 (資料 11-5)
   第1回OECD/NEA ADSベンチマークではわずか3機関の参加にとどまり比較が不充分であった
ので、核破砕の解析をはずし炉心特性に重点を置く等仕様を変更した第2回ベンチマークを実施
した(6機関が参加)。また、第1回ベンチマークでは各機関の解析手法がほぼ同じであったが結
果に差が見られたため、核データの差のみに起因する差異を検討するため、JENDL-3.2、
ENDF/B-VI(.2?)、JEF-2.2を用いた第1回ベンチマークの再計算を実施した。初期実効増倍率や
燃焼反応度変化に対し241Amや237Npのν値や核分裂スペクトルの違いが影響をもつことを確認
した。また、242Cmの共鳴領域の核分裂断面積にもライブラリ間で大きな違いが見られた。

8) FCAにおけるW、Er、ThO2ドップラー反応度測定 (資料 11-7)
   Th、Er、W等のドップラー反応度データ取得のためFCA実験を実施した。Er及びWサンプルは
天然Uサンプルと、ThO2サンプルは天然UO2サンプルと同程度のドップラー反応度をもつことを
確認した。SRACとJENDL-3.2を用いた解析結果は誤差の範囲内で測定と一致した。Wをのぞくサ
ンプルでは、PEACOによる計算値がtable-look-up法による値よりも大きなドップラー反応度と
なった。特にUO2サンプルについてはこれまでのFCA実験とは異なる傾向の結果が得られてお
り、検討が必要である。

9) 今後の予定
   WGリーダについては、高野氏が今後も引き続き行うこととなった。来年度は、JENDL-3.3ベ
ンチマークを中心に活動を行う。

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Hideki Takano  
Center for Neutron Science, JAERI
Tel: +81-29-282-6151, Fax: +81-29-282-5996