各 位

 今年6/26に開催されました第1回医学用原子分子・原子核データグループの
議事録をお送りいたします。

原田康雄@昭和大学
[Minutes of the Medical Use Group]
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          シグマ研究委員会・医学用原子分子・原子核データグループ
                     平成15年度 第1回会合議事録

開催日時:平成15年6月26日(木)13:30〜17:30
開催場所:昭和大学「昭和大学病院」17階 第4会議室
出席委員:伊藤 彬(癌研究会)、上原周三(九大)、遠藤  章(原研)、古林 徹
     (京大炉)、長谷川智之(北里大)、原田康雄(昭和大)、松藤成弘(放医
     研)、森林健悟(原研)
欠  席:今堀良夫(京都医科大)、岩波 茂(北里大)、加藤 洋(都立保健科学大)
オブザーバ:岡本浩一(日大)

配布資料:MED-2003-1-0:平成14年度 第1回会合議事録
      MED-2003-1-1:報告書原案に対する尾川、山口両前年度委員からのコメント
      MED-2003-1-2:物理学会シンポジウムの抄録(上原委員)


議 事:
1.報告事項(古林委員)
1.1 本グループの新メンバーとして森林、長谷川両委員の紹介があった。
1.2 平成15年度は、尾川、山口両委員が森林、長谷川両委員に交代する形になり、委員
数は前年度と同じ11名体制で行くことになった。
1.3 物理学会シンポジウム(3月29日)に古林、上原委員が参加し、「本グループの紹介」
と「水における荷電粒子のモンテカルロ飛跡構造」についてそれぞれ講演した。
1.4 上記シンポジウムに関係して、古林、森林委員が核融合研究所で行われた原子分子
作業部会(5月23日)に出席した。作業部会は10名程の原子過程を研究しているメンバー
から構成されており、データの生産、収集と評価などを行っている。今後、連絡を密に
して活動して行くことが双方にとってメリットがあるとの意見であった。
1.5 シグマ運営委員会(平成15年6月12日)に古林委員が出席し、平成14年度の活動報告
と平成15年度計画を、運営委員会の配付資料「平成14年度の活動概要及び平成15年度の
活動計画について」を用いて報告した。
1.6 本グループの3年間の活動報告書(案)の編集を古林、原田、遠藤委員が行った。
本日の会合で討議し承認を得てから次のステップに進む予定できている。

2.前回議事録の承認
 配布資料MED-2003-1-0のまま承認された。
(http://www.senzoku.showa-u.ac.jp/dent/radiol/Prometheus/Committee/SIGMA_2002
NOV.htmlに掲載)

3.委員報告
 演 題:「水における荷電粒子のモンテカルロ飛跡構造」上原委員
 放射線の生物作用を解明する上で、放射線飛跡構造シミュレーションが有効な手段で
あることは、広く認められている。それは放射線によるエネルギー付与の過程をナノメ
ーターサイズの微視的空間分布として付与の事象ごとに時刻を追って提供するものであ
り、DNAの分子レベルにおける現象を解明するカギとなり得る。
 ここでは、主として水蒸気の実験的、理論的および半経験的データを用いて著者が作
成した電子、陽子およびα粒子の飛跡構造コードを紹介し、そのコードの検証として、
各断面積から計算した阻止能をICRU報告値と比較し、これらの断面積を用いた飛跡モン
テカルロ計算から得られるW値、動径方向線量分布、y分布をそれらの実測値と比較した。
さらに飛跡構造データに水の放射線分解により生成する初期活性種(ラジカル)の拡散
係数や反応速度定数を取り入れて、それらのG値を算定するなど、DNA損傷の引き金とな
る水の放射線化学的過程へのアプローチを示した。
 これらの解析を通じて、原子分子データが必要な物質としては、水、炭素化合物、DNA、
たんぱく質であり、またそのエネルギーは荷重粒子のブラッグピーク近傍の領域で特に
不足していることを示した。

 演 題:「次世代PET装置の開発とこれまでの研究と今後」長谷川委員
・次世代PET装置の開発:これまでよりも高速高感度応答の全身用PET装置を3年後を目処
として開発している。特に検出系に光子の飛来方向を特定できる新開発の技術や多層に
した高速応答の検出器材料GSO(Gadolnium Silicon Oxide)と画像再構成アルゴリズムに
逐次近似法など計算技術の高速化が活かされている。
・ガン検診センターのPET装置:現行の機種の改良型を導入して、民間のPETガン検診セ
ンターが設立された。これらの装置の開発にも参加している。次世代PET装置の開発とは
異なる視点から、ガン検診に対して現時点でのPET装置の改良に関する解答をメーカーと
の協力関係で研究している。
 以上の開発に光子輸送コードと光子断面積データなど原子分子データを利用している。
幸い、PETに必要な原子分子データに関しては、精度の高いデータが既知なエネルギー領
域であり、CTとPETを組み合わせた装置(日本では薬事法の関係で未承認)で、高精度な
診断が実現可能であると考えている。
・これまでの研究:学位論文にした(π+, K+)反応をプローブとした高原子番号(鉛な
ど)の原子核に関する研究について紹介した。本研究を通じて、さまざまな放射線検出
系の開発や改良に携わった。その経験を活かして、現在の課題に取り組んでいる。
・今後の抱負:教育の面でscientific visualizationなどのツールを活かし、放射線物
理現象の可視化を試みた教材の作成を通じて、これからの学生に放射線がトップ頭脳集
団が目指すべき興味深い領域であることをアピールしていきたい。

4.討議事項
4.1 活動報告書(案)の検討
 グループリーダから前回議事録の線に沿って作成された原案についての経過報告の後、
現時点での新たな問題について討議した。
 遠藤委員から予定している3年間の本グループ活動報告書(JAERI-Reviewを予定)に
関して、出版までの流れなど検討事項について説明があった。尾川および山口両前年度
委員から出されたコメントについては、議論結果、(1)報告書の体裁については編集者に
一任で個別に対応する、(2)本文と付録との表現の重複については、本文を変更してそれ
をさける方向で調整することになった。また、印刷部数のうち本グループ用として希望
する部数を100部とした。また、今後の査読等に対する対応はグループリーダが行うこと
とした。

4.2 グループリーダの選出
 現グループリーダが3年ごとの見直しを提唱していたことから、本来昨年度に予定して
いた案件であったグループリーダを選出した。
  委員から出された意見は次のものであった。(1)シグマ委員会自体が過渡期の状況にあ
り、本グループは、引き続きこれまでの方針で進むべきである。(2)シグマ研究委員会の
中のグループの見なおしに関しても、独自性と必要性を強く打ち出して行くべきである。
(3)医学における核データと原子分子データを両輪として、どちらも欠かすことのできな
い重点領域としてバランスを保った活動を本グループは目指すべきであり、そのような
リーダシップをグループリーダが発揮すべきである。これらの議論から、もう一期(今
年を含めて3年)現グループリーダが継続することになった。

4.3 今年度の活動方針
 基本的には平成12年度に定めた路線を継承し、具体的には運営委員会で報告された次
の諸点を重視することになった。

1) 情報発信
・核データニュースなど関係誌に関係記事を投稿する。
・ホームページの充実および活用。
・3年間の活動報告書作成(現在必要な手続き中)
2) 交流促進など
・医工連携の動きに沿って、その橋渡しの役割を模索する。
3) 今後の予定
 医学用の原子分子データの検討において重要な、分子結合レベルのeVオーダーでのデー
タの整備、例えばDNAレベルの線量評価などを想定して取り組む予定である。また、原子
核データについては、中性子、γ線(X線)、電子線、中間子、重粒子線等、複合的な
現象を一度に評価できる計算コードやそれに適したデータを整備していくことが望まし
い。一般的に利用の増大がデータ整備を促進する側面を持っていることから、利用者の
拡大と利用機会の増大を促進するハード及びソフト面の整備を積極的に進めることも重
要な検討課題と捕らえて、情報化の社会システムに適合した方向を模索する。

4) 今後の体制と役割分担
 上記1)-3)の取り組みを効果的かつ効率的に行うための体制や役割分担について意見交
換が行われた。各委員が担当する分野やそれに対する取り組み等について希望や意見を
e-mailで集約することになった。分担分野の一例として、原子分子、原子核、医学物理
全般、情報工学、医学の説明があった。
 この他、各委員から、話題提供や先端研究を行っている本グループの活動に関係した
各分野の招待講演者を積極的に推薦して戴くことを希望する旨グループリーダから要請
があった。

5.その他
 次回会合は平成15年11月中旬頃を予定し、e-mailで調整する。


[以上]