去る2月15日に開催されました中高エネルギー核データ積分テスト
WG会合の議事録(案)をお届けします。
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中高エネルギー核データ積分テストWG
2004年度第1回会合 議事録(案)
日 時:2005年2月15日(火)13:30〜17:30
場 所:日本原子力研究所 計算科学技術推進センター第1小会議室
出席者:山野(東工大)、安藤(東芝)、小迫(清水建設)、日野(日立)、
植木(新型炉技術開発)、仁井田(RIST)、前川、深堀(原研)
以上8名(敬称略・順不同)
配布資料:
HIT-2004-1: 厚いWターゲット陽子入射実験によるベンチマーク計算(日野)
HIT-2004-2: TIARAとWNRのベンチマーク計算(小迫)
HIT-2004-3: JENDL-High Energy File問題点まとめ(佐藤)
HIT-2004-4: ADSのための標準核データライブラリーに関するIAEA技術
会合報告
(深堀)
HIT-2004-5: JENDL High Energy File ファイル化の現状(深堀)
HIT-2004-6: 平成16年度活動報告及び平成17年度計画(案)(深堀)
HIT-2004-7: JENDL-High Energy File問題点まとめ(PHITS開発者より)(仁井田)
議 事 :
1.前回会合議事録(案)の確認
前回会合議事録の報告があり、確認された。
2.厚いWターゲット陽子入射実験によるベンチマーク計算
日野委員より資料HIT-2004-1を用いて、ITEP(ロシア)で実施された
厚いWターゲット陽子入射実験(20cmφ×60cmLのW円柱に0.895及び
1.21 GeVの陽子を入射し、表面に配置したAl、P、S、Bi箔の放射化量を
測定する)に対するベンチマーク計算の結果の一部が報告された。
NJOY99.90によりMCNPライブラリを作成し、MCNPX 2.4.0で箔位置での
中性子フラックスを計算し、JENDL/HE-2004及びLA150に基づく
ライブラリによる結果の比較を行った。入射面に近い程、JENDL/HE-2004の
結果は、LA150に比べて高エネルギー側の中性子が多い結果と
なっている。MCNPX 2.4.0では陽子入射の計算がうまくいかない
可能性があり、2.5.e以降のバージョンのものを使用すべきであると
された。また、ライブラリ作成に問題がある可能性も指摘されたので、
小迫委員が作成したものを使って、再計算してみることとした。また、
最終結果との比較に必要であるので、放射化断面積を深堀及び
前川委員より提供することとした。
3.TIARAとWNRのベンチマーク計算
小迫委員が資料HIT-2004-2により、TIARA(原研)での鉄・
コンクリートに対する中性子透過実験(43, 68 MeV陽子+Liター
ゲットによる中性子)及びWNR(ロスアラモス国立研究所)での
厚いC、Al、Feターゲット陽子入射実験(113及び256 MeV陽子)に
対するベンチマーク計算の結果が報告された。JENDL/HE-2004、
LA150及びNRG2003に基づくライブラリによる結果の比較を行った。
JENDL/HE-2004に関しては、WNRのCの結果は良好であるが、
Al及びFeに関しては低エネルギー側で実験値を過大評価している。
改善の余地がありそうである。
TIARAの68 MeV陽子入射Fe透過実験に関しては、LA150及び
NRG2003がFeが厚くなるに従って過大評価になる傾向があるのに
対して、良好に実験データを再現している。しかし、43 MeVの
場合はLA150程ではないにしろ、過大評価の傾向がある。
コンクリート透過実験の方は、比較的良好に実験データを再現している。
この他、MVP-JHETによる厚いCターゲット(WNR)の計算や、
AGS(ブルックヘブン国立研究所)での水銀ターゲット実験に関する
解析も行われ、良好な計算結果が得られている。また、高エネル
ギーでの透過実験解析には、疑似弾性散乱の影響が大きいことが
指摘された。
4.JENDL-High Energy File問題点まとめ
佐藤氏(原研)によってまとめられた資料HIT-2004-3により、
仁井田委員がJENDL-High Energy FileのH、C、N、Oに関する
ライブラリの問題点を以下のようにまとめた。
* Hについて、物理的にあり得ない高エネルギー陽子がきわめて
多く発生する。また、低エネルギー中性子を前方に発生させる。
これらはJENDL/HE-2004自体に問題がありそうである。スペク
トル計算で反跳された陽子が発生してしまうのは、ライブラリ化の
問題であろう。
* Cに関して、LA150等と比べて陽子入射の陽子生成断面積が
小さいように思われる。(p,p’)断面積が小さい可能性があるが、
検討が必要である。
* N、Oに関して、中性子入射の中性子生成断面積、陽子入射の
陽子生成断面積が小さいように思われる。(n,n’)、(p,p’)断面積が
小さい可能性があるので、再評価もしくは再ファイル化が必要で
あろう。
また、配付資料HIT-2004-7(会合後配布)を用いて仁井田委員より、
以下のベンチマークテストについて報告があった。
* 鉄のベンチマーク問題
半径5m、長さ6mの円柱の鉄に、3GeVの陽子が核破砕ターゲットに
入射したときに発生する中性子のスペクトルを仮定したソースを入射
させて深さごとの中性子のフラックスを比較した。
* 鉄の(p,n)反応のDDX
陽子のエネルギー、113, 256, 597, 800, 1500, 3000 MeVの鉄標的
からの中性子スペクトルを比較した。
5.ADSのための標準核データライブラリーに関するIAEA技術会合報告
深堀委員より資料HIT-2004-4を用いて、ADSのための標準核データ
ライブラリーに関するIAEA技術会合に関する報告があった。IAEAでは
ADSベンチマークのための標準ライブラリ作成に向けての活動が
始まっている。
6.JENDL High Energy File ファイル化の現状
深堀委員より資料HIT-2004-5を用いて、現在高エネルギー核データ
評価WGで行われている評価の状況が示された。
7.平成16年度活動報告と平成17年度活動計画について
深堀委員より資料HIT-2004-6の説明があり、本WGの活動報告と
計画について議論した。本WGでは、ベンチマーク問題の選定を行い、
中高エネルギー核データに対する積分検証法についての知見を得て
おり、結果は核データ国際会議(ND2004)等で発表されている。これら
経緯を踏まえて、JENDL/HE-2005の公開後、これに基づくベンチ
マークテストを継続することとした。
8.その他
次回会合予定は未定である。
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