第1回JENDL-3.2問題点検討小委員会議事録(案)

日 時:平成8年8月28日(水) 13:30-17:30
場 所:原研東海 研究2棟222号室
出席者:石川 眞(動燃)、松延 廣幸(データ工学)、山野 直樹(住原工)、
高野 秀樹、前川 藤夫、中島 豊、長谷川 明、柴田 恵一(原研)

配付資料
J3P-1-1 JENDL-3.2問題点検討小委員会の設置について
J3P-1-2 JENDL-3.2データの問題点					 柴田
J3P-1-3 重核の中性子スペクトル(V.Maslovの評価値)
J3P-1-4 JENDL-3.2の問題点−リアクター積分テストWGからのコメント     高野
J3P-1-5 JENDL-3.2の問題点						 前川
J3P-1-6 高速炉への適用性から見たJENDL-3.2の考察			 石川

議事
1.  小委員会の目的
本小委員会は、JENDL-3.2の改訂を視野において、JENDL-3.2 General Purpose File
のデータの問題点を微分・積分の両面から検討するものである。あくまでも問題点
の洗い出しに専念し、その結果を運営委員会に報告する。問題点の原因究明は核デ
ータ専門部会内において、新たにワーキンググループを設けて行う。

2.  具体的な問題点
1)  評価者サイドより
配付資料J3P-1-2を基に柴田委員が現在までに核データセンターが把握している
問題点について報告した。問題の可能性が指摘されたデータは以下の通りである。
14N(n,p):	過小評価の可能性あり。
16O(n,2n):	編集ミスにより10倍大きな値になっている。
Fe total, inelastic 800 keV-数MeV:
		ASPIS, FNSの積分実験と食い違う。
W:		ガンマ線生成のエネルギーバランスが崩れている。
181Ta(n,a):	数10keVで数100mbと大きな値をとる。
235U(n,g):	共鳴領域の断面積が過小評価の可能性あり。
236Pu(n,f):	1 MeV以下の断面積が測定値に比べ小さすぎる。
重核の連続中性子スペクトル(資料J3P-1-3):
	233,235UのスペクトルがMaslovの計算値と大きく食い違う。他の重
        核もチェックする必要あり。
2)  リアクター積分テストWGより
 高野委員より配付資料JP3-1-4に基づき、リアクター積分テストグループから
のコメントが報告された。以下にその内容を示す。
a.  238U非弾性散乱断面積及び弾性散乱角の平均余弦
高速炉のkeffに関しENDF/B-VI及びJENDL-3.2は大きな差を示す。なお、
JENDL-3.2の平均余弦は数10keV以下で不自然な形を示している。
b.  233Uの断面積
小型炉心のkeffでENDF/B-VIとJENDL-3.2間に2%ほどの差がある。核分裂断面
積の差によるものかもしれない。
c.  Na及び酸素の断面積
Naの弾性・非弾性散乱断面積及び酸素の弾性散乱断面積のENDF/B-VIと
JENDL-3.2間の差は、Naボイド反応度に大きな影響を与える。
d.  235U捕獲断面積
Derrienの評価した共鳴パラメータを使うと断面積は200eV−2.2keVの範囲で
JENDL-3.2より20−80%大きくなる。この差は熱中性子炉のkeffには影響が小さい
が、FCA-IX炉心では大きな影響を及ぼす。
JENDL-3.2ではJENDL-3.1に比べ熱中性子炉のkeffを0.3-1.1%大きくする。この
差は、235Uの熱領域捕獲断面積の違いによる。
上記a)b)c)での議論はあくまでもENDF/B-VIとJENDL-3.2間の差を言及している
のであり、JENDL-3.2のデータがおかしいということを意味するものではない。
3)  高速炉より
石川委員が配付資料J3P-1-5に基づきJUPITERの臨界性、反応率比、空間依存性、
Naボイド反応度のデータ及びENDF/B-VIとの比較より、見直しの必要があるデー
タをリストアップした。以下にその一覧を示す。
a.  238U inelastic, capture, 平均余弦
b.  235U capture
c.  239Pu fission, capture, 平均核分裂中性子数,核分裂スペクトル
d.  240Pu fission, capture
e.  241Pu fission
f.  Fe inelastic
g.  Na elastic, inelastic, 平均余弦
h.  O elastic, 平均余弦
4)  核融合中性子工学の観点から
配付資料J3P-1-5に基づいて前川委員が核融合炉中性子工学の観点からJENDL-
3.2の問題点を指摘した。一般的な問題として、同位体ファイルの精度向上及び放
出粒子、ガンマ線のエネルギーバランスの改善が必要である。個々の問題点の概略
を以下に示す。
a.  鉄
ガンマ線核発熱の計算値がFNS測定値に比べかなり大きい。この問題は、JENDL 
Fusion Fileでは解消された。
透過実験との比較より14MeV付近のJENDL-3.2の弾性散乱断面積が過小評価の
可能性がある。また、5keV付近の全断面積を見直す必要がある。
b.  ニッケル
捕獲ガンマ線のエネルギーバランスに問題がある。また、(n,a)断面積が100keV
以下でも有限の値をとる。
c.  タングステン
ガンマ線のエネルギーバランスに問題がある。
d.  中性子スペクトル
フッ素、チタン、コバルトに関してOKTAVIANで測定した漏洩中性子スペクト
ルとJENDL-3.2の計算値の一致がよくない。
e.  2次ガンマ線スペクトル
チタン、クロム、ニオブ、タングステンでOKTAVIANの測定値とJENDL-3.2の
計算値が食い違う。
f.  銅
銅体型内で測定した中性子スペクトルと計算値との比較から63Cuまたは65Cuの
数100keV付近の共鳴パラメータに問題の可能性あり。

3.  その他の議論
a. JENDL-3.2の問題点を調査をJNDCメールを通じて行うことにした。また、各
利用分野で必要な核種、反応、エネルギー範囲、優先度、精度を調査すること
にした。
b. データの再評価に当たっては、エネルギーバランスのように反応間の
consistencyに注意を払う必要がある。従って、反応毎に評価を分担するのは適
当ではなく、なるべく核種毎に分担すべきである。
c. 評価の詳細は、将来の評価作業のため必ずドキュメント化する必要がある。
d. 今後、再評価したデータはUpdate Fileに順次格納し、利用者からのフィードバ
ックを求めることにした。

次回会合 10月14日(月)原研本部
議事予定:評価サイド(FPデータ)
     利用サイド(遮蔽、核融合炉設計、FCA、NUCEF、再処理等)



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