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須山@日本原子力研究所です.遅く鳴りましたが,先日行われた核種生成量評価
WGの議事録(案)をお送りします.
シグマ委員会各種生成量評価 WG
平成 10 年度第 1 回会合議事録(案)
1. 日時
1998年 11 月 5 日 13:30 - 18:30
2. 場所
日本原子力研究所本部第一会議室
3. 出席者
20 名(順不同,敬称略)
北野(三井造船;オブザーバー),内藤(ナイス;リーダー),田原(三菱
重工), 山本(東芝),佐久間(日立;オブザーバー),笹原(電中研;オ
ブザーバー),月山(HEC;林代理),青山(サイクル機構),岡嶋(原研),
安藤(原研;オブザーバー),黒澤(原研),片倉(原研),松村(電中研),
須山(原研),鈴木(放振協),青山(日立),佐治(TSI),金子(日本総
研),大川内(サイクル機構),松延(データ工学)
4. 配布資料
10-1-1 平成9年度第3回議事録(案)
10-1-2 一群定数作成報告書の作成経緯
10-1-3 ORIGEN2.1-JNDC 添付配布 README.j
10-1-4 高燃焼度 BWR 使用済燃料の核種組成分析結果とJENDL3.2より作成した
ORIGENライブラリを用いた解析との比較
10-1-5 MOX用ライブラリBS2M4J32.LIB によるMOX燃料崩壊熱評価
10-1-6 検証計算計画及び感度解析計画の検討(案)
10-1-7 核種生成量に関する検証計算計画及び感度解析計画について
10-1-8 ガンマスキャン測定によるPWR使用済燃料棒の軸方向燃焼度分布の評価
10-1-9 弥生炉を用いたMA核種の断面積測定・評価
10-1-10 使用済高速炉燃料の中性子放出率の測定と評価
10-1-11 「常陽」使用済燃料の崩壊熱の測定評価
−短期間冷却燃料の崩壊熱−
10-1-12 マイナーアクチニドの核データに関するISTC日露ワークショップ報文集
(抜粋)
10-1-13 Source-3A: A Code for Calculating (alpha,n) , Spontaneous Fission,
and Delayed Neutron Sources and Spectra (by R.T.Perry et.al)
10-1-14 「荷電粒子核データ WG 活動状況」及び断面積評価の例
10-1-15 Pu組成とPu 富化度一覧
5. 議事内容
〇 議事録確認
10-1-1 により,前回の WG 議事録が報告され承認された.
=== 作成された一群定数ライブラリに関して ===
〇 一群定数作成報告書の作成経緯(須山)
10-1-2 により,JENDL-3.2 に基づくORIGEN2 用ライブラリに関するレポー
ト,ならびにライブラリの現状が報告された.現在,JAERI-Data/Code として
レポートの投稿がなされており,年内には公刊される予定であることが報告さ
れた.また,ライブラリに使用した SWAT に bug が発見されたために,その
修正を行い,修正済みの SWAT で評価用ライブラリの再作成を行ったこと,し
かしながら,その bug による主要な同位体の計算値の差はほとんどないこと
が続けて報告された. そして, BWR MOX 用ライブラリの作成が進んでいるこ
とが報告された.
〇 高燃焼度 BWR 使用済燃料の核種組成分析結果とJENDL3.2より作成した
ORIGENライブラリを用いた解析との比較(笹原)
10-1-3により,電中研が欧州超ウラン元素研(TUI)でおこなっている, BWR 燃
料の照射後試験結果を,JENDL-3.2 より作成した BWR STEP-2 燃料用 ORIGEN2
ライブラリを用いて解析した結果が報告された(1998秋の原子力学会で報告され
たもの).PIE の対象となった燃料は BWR 9x9 燃料(平均燃焼度 55 GWd/t サ
ンプル位置燃焼度 66 GWd/t ) のものである.計算では,PIE サンプルの位置で
のボイド率に対するライブラリは無いために,ライブラリが用意してある3 ボイ
ド率用のライブラリを使用して計算を行っておき,それらの計算結果を,対象サ
ンプル位置でのボイド率で内挿して,最終的な計算値を求めたことが報告された.
全体的に,アクチノイドの計算値は改善の傾向が見られ,FPの計算値も大幅に改
善されたものがあることが報告された.また,中性子放出量の計算値も改善され
たことが報告された. これに対して,対象燃料の燃焼度が高くSTEP-3燃料であ
るので,ライブラリとして STEP-2 燃料のライブラリを使用するのは問題である
のではないか,という意見が出されたが,サンプルの初期濃縮度が 3.5 % であ
るので STEP-2 用燃料のライブラリを使用したことが報告された.
〇 MOX用ライブラリBS2M4J32.LIB によるMOX燃料崩壊熱評価(佐久間)
10-1-4により,テスト用として作成した BWR MOX 燃料用ライブラリと,
ORIGEN2に付属のオリジナルライブラリ BWR-PUPU による,崩壊熱計算値の比
較が示された.計算された個々の同位体の崩壊熱には大きな差を示すものもあ
ったが,それらは崩壊熱の絶対値が小さいために,結果的に両ライブラリとも
同様の崩壊熱を計算することが示された.また,一部の同位体の崩壊熱が 0
となっているものがあったが,これらに関しては須山委員が調査を行うことと
した.
=== 軽水炉 MOX 燃料ライブラリの作成に関して ===
〇 Pu 組成と Pu 富化度一覧(田原)
10-1-15 により,PWR MOX 燃料用 ORIGEN2 ライブラリの作成パラメータとなる
Pu 富化度の提案があり,そこでは,3 種類の Puf wt% と 3 種類のプルトニウ
ム組成が示された.議論の末,プルトニウム組成として,D5 外,標準,E1という
3種類の値を使用してライブラリを作成することが承認された.またPuf wt %とし
て D5外及び標準プルトニウム組成のものについては 3, 6, 7 % のものを作成する
ことが承認されたが,E1 プルトニウム組成のものについては Puf% は決定され
なかった.また,PWR MOX 用ライブラリ適用最高燃焼度は 66 GWt/t 以上とするこ
とが確認された.これに関連して MOX 燃料における U 母材の U-235 濃縮度は,
BWR-MOX の場合は 1 % , PWR-MOX では 0.2 % という値が確認された.
=== 作成した一群定数ライブラリの検証計画に関して ===
〇 ガンマスキャン測定によるPWR使用済燃料棒の軸方向燃焼度分布の評価
(鈴木)
10-1-8 により,原研で行っている PWR 及び BWR 燃料に対する照射後試験の
概要が示された. その測定で,軸方向燃焼度分布を測定するためのガンマス
キャン測定,破壊検査による同位体組成の測定が行われている現状が紹介され
た.
〇 核種生成量に関する検証計算計画及び感度解析計画について(松村)
10-1-7 により,作成した ORIGEN2 用一群断面積ライブラリの検証の提案が
なされた.感度解析では,各断面積の核種生成量に対する感度,運転条件等の
核種生成量に対する感度,反応度解析における各核種の生成量相互の感度等の
提案がなされた.
〇 検証計算計画及び感度解析計画の検討(案)(安藤)
10-1-6 に基づき,作成した ORIGEN2 用ライブラリの適応性を明確にするた
め,公開となった核種組成データの解析を行い,ライブラリ作成時に設定した
条件と解析条件が異なった場合の計算値の誤差を示してはどうかという提案が
なされた.
以上の報告をふまえ,今後の検証をどのように行うのかという議論になった.
そのなかで,核データ評価への feedback というのであれば,他の評価済みデ
ータを使用した単純体系に対する燃焼解析を行い,バックエンド側で重要とな
る同位体量の,使用済み核データの違いによる計算値の差をみればいいのでは
ないかという意見が出され,合意された.その具体的内容に関しては特に議論
はされなかった.
=== MA の断面積評価に関する報告 ===
前回の会合での,今後の活動方針に関する合意に基づき,MA に関連したデータ
取得・調査・収集例が報告された.
〇 弥生炉を用いたMA核種の断面積測定・評価(大川内)
10-1-9 により, サイクル機構が東大弥生炉を使用しておこなっている MA
断面積評価に関する研究の例を紹介した.その測定では BTB 検出器を使用し,
Np-237 , Am-241,Am-243 の核分裂断面積の測定が行われている.解析では
MVP が用いられ,Np-237 では実験結果との 30 % 近い差が示されたことが報告
された.
〇 FCA を用いたアクチノイド断面積の積分実験について(岡嶋)
高速臨界集合体(FCA)での MA 同位体の断面積評価のための積分実験の例が紹
介された.FCA での一連の実験では,照射場のスペクトルを系統的に変化さて
反応率をもとめ,解析と比較を行い,最終的に断面積へのフィードバックを行
った例が紹介された.
〇 マイナーアクチニドの核データに関するISTC日露ワークショップ報文集
(片倉)
10-1-12 により,ISTC を通じて核データセンターが行っている,マイナーア
クチニドの核データ評価活動の例が示された.その中で,皆に使ってもらうに
は,ISTC のデータがどのような形で公開されるかを調べる必要があるとのこ
とであった.
〇 使用済高速炉燃料の中性子放出率の測定と評価(青山;サイクル機構)
10-1-10 により,高速実験炉「常陽」の使用済燃料からの中性子放出量測定
の実験と解析が示された.高速炉の使用済燃料からの中性子放出量の 50 % は
Cm-244 が占めており,燃料下端部においてその量が増加する傾向があること
が述べられた.
〇 「常陽」使用済燃料の崩壊熱の測定評価
−短期間冷却燃料の崩壊熱−(青山;サイクル機構)
10-1-11 により,高速実験炉「常陽」の使用済燃料の崩壊熱の測定と,
JENDL-3.2 より作成した ORIGEN2 ライブラリを使用して解析を行った例が示
された.その結果によると,ORIGEN2 コードによる崩壊熱計算と測定値の比
(C/E)は 約 0.9 であり,C/E には燃焼度依存性が見られること,照射開始時
の燃料に微量に含まれる Pu-238 や Am-241 の量が崩壊熱の評価に重要である
ことが示された.また,崩壊熱の測定誤差は, 1kw 程度の崩壊熱では 2 % で
あることが述べられた.
=== その他の事項 ===
〇 厚いターゲットに入射したアルファ粒子による (alpha,n) 反応によって
放出される中性子のエネルギスペクトルに関して(松延)
10-1-13 と 10-1-14 により,厚いターゲットに入射したアルファ粒子が起
こす (alpha,n) 反応によって放出される中性子のエネルギスペクトル評価の
困難さと,それを本 WG で行うかが議論された.荷電粒子核データWG では
(alpha,n) 反応断面積の評価が進んでいるが,厚いターゲットを対象とした場
合には,アルファ粒子のターゲット内での輸送を取り扱う必要があるために,
多大の数値計算上の厄介さを含んでおり,マンパワーなどを考えると,荷電粒
子核データ WG では作業を辞退したいとの方針が示された.そして,このデー
タが本 WG リーダーより求められていたために,今後の取り扱いをどうするか
を検討を行ってほしいとのことであった.議論の結果,問題となっているデー
タは,最終的に必要とするユーザーが各自で計算を行って求めればよく,核デ
ータのような基本的データではないとの結論となり,本 WG でも強い要望はな
いため,薄いターゲットの ( alpha, n) 反応断面積と放出中性子のエネルギ
ースペクトルだけを算出するという,荷電粒子核データ WG の方針に異存はで
なかった.
以上
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須山賢也(SUYAMA Kenya)@日本原子力研究所
Phone 029-282-5943 Fax. 029-282-6479
URL http://s4a.tokai.jaeri.go.jp/~kenya