リアクター積分テストWG 議事録 (案)
日時 : 1999年3月11日(木) 13:30〜17:30
場所 : 東電ソフトウェア(株) 11階 A会議室
出席者 : 石川眞、横山賢治(以上動燃)、岩崎智彦(東北大)、金子邦男
(総合技術情報機構)、亀井孝信(高速炉エンジニアリング)、北田孝典
(阪大竹田代理)、佐治悦郎(東電ソフトウェア)、三田敏男、瑞慶覧篤
(以上日立)、池田一三、田原義寿(以上三菱重工)、山本宗也(東芝)、
高野秀機、秋江拓志、飯島進、大井川宏之、中川庸雄、中島健、
長家康展、(以上原研)
欠席者 : 鷹見益夫(CRC)、長谷川明、森 貴正、中野佳洋(原研)
配付資料 :
資料1 第8回リアクター積分テストWG議事録 (案) (秋江)
資料2 ZPPR-9炉心ベンチマーク問題の作成(最終版) (石川)
岩井他 : "ZPPR-9炉心ベンチマーク問題の整備", PNC TN9410 98-079
資料3 A Proposal for Benchmark Calculation on Fast Reactor Physics
Based upon Mock-up Experiments at FCA (飯島)
資料4 炉定数調整計算のためのFCA XVII-1実験解析 (横山)
資料5 TCA Experiments for Benchmark Calculation (中島)
資料6 マイナーアクチニドデータの現状 (中川)
資料7 235Uデータの現状 (中川)
資料8 U-235の核データとベンチマーク (金子)
資料9 イナートマトリクス燃料ベンチマークの現状 (秋江)
資料10 "Reactor Benchmark Testing for JENDL-3.2, JEF-2.2 and
ENDF/B-VI.2", Proc. Physor'98
資料11 "Benchmark Problems on Transmutation Calculation by the OECD/
NEA Task Force on Physics Aspects of Different Transmutation
Concepts", Proc. Physor'98
資料12 Benchmark Model for Accelerator Driven System with Pb-Bi
cooled Subcritical Core
(以上高野)
資料13 JENDL-3.2に基づく統合炉定数の開発 (横山)
議題 :
1) 前回議事録の確認(資料1)
2) ZPPR-9炉心ベンチマーク問題(資料2)
前回WGのコメント等に基づきZPPR-9炉心ベンチマーク問題の改訂を行い、
動燃(当時)の公開レポート化した。前回WGからの変更点は、制御棒価値
の基準計算モデルを2次元X-Yモデルから3次元X-Y-Zモデルとしたこと、お
よび7群あるいは18群による体系計算をやめ群数として70群を採用したこ
とである。またその他に、反応率比・反応率分布解析における非均質セル
補正係数を見直してセルファクターの実験値を排除、ドップラー反応度解
析において共鳴干渉効果補正をPEACO-Xコード(非公開)からSRAC95(公開コ
ード)のPEACOによる値に変更する等の改訂も行われた。今回紹介されたレ
ポートは、領域毎の均質組成を用いた2次元R-Z、あるいは3次元X-Y-Z体系
簡易計算モデルと各補正係数であるが、1次元のセル非均質効果も含む詳細
解析モデルや、臨界性に関してはVIMとMVPのモンテカルロコード用の
as-builtな体系モデルも提供可能である。
制御棒価値に空間(炉心の内側と外側)依存性が見られるが、以前は10%あっ
た差異が3%程度に減少し測定誤差範囲に収まる程度になったとのこと。ま
た、PEACO-XとSRACのPEACOによる共鳴干渉効果はほぼ同じ値であったが、
出典を明らかにできるので公開コードであるSRACの値を採用した。ZPPR-9
以外の炉心データも今回と同レベルの情報が公開レポートとなっている他、
詳細解析モデルやas-built体系計算モデルとしてZPPR-9と一緒にMO上のデ
ータとして提供できる。今後は、世界に公開するために今回のレポートを
他炉心も含めて英語化してほしいとのコメントがあった。
3) FCA炉心ベンチマーク問題(資料3)
前回WGに続き、金属燃料高速炉およびMOX燃料高速炉モックアップ炉心に基
づくベンチマークモデルの提案が、レポートのドラフトを用いて示された。
ZPPR-9解析モデル同様、均質組成が与えられた各領域からなる体系計算モ
デルと補正係数という形のベンチマークモデルである。前回のコメントに
基づき、各補正係数の計算手法に関する記述と、連続エネルギーモンテカ
ルロ計算との比較が追加されたほか、今回新たにB4Cサンプルワースがベン
チマークの比較項目に加えられた。
ここで提案されている(決定論的)手法とモンテカルロ法との比較では、非
対称セルをもつFCA XVI-1炉心の実効増倍率を除いて、増倍率、各反応率比
とも一致がよく、補正係数の妥当性を示している。反応度価値等はモンテ
カルロ法で参照解を得るのが困難であるが、中性子スペクトルを比較する
と1keV以下のエネルギーでモンテカルロ法に比べフラックスを低く見積る傾
向がある。この差異が仮に10%あると238Uのドップラー反応度を4%過小評価
するとのこと。
モンテカルロ法との比較の箇所では、目安としてC/E値も同時に示してはど
うかとの意見もあった。また、補正係数の核データライブラリ依存性に対
する興味も述べられた。今回のコメント等も反映して、本レポートも近く
publishの予定である。
4) サイクル機構の手法によるFCA実験解析(資料4)
サイクル機構と原研の共同研究「炉定数調整のためのFCA実験・解析データ
の評価」において、サイクル機構の解析手法によりFCA XVII-1炉心の臨界
性、反応率比、Naボイドおよび238Uドップラーサンプル反応度価値の解析
を行っている。原研の解析手法との比較では、臨界性、反応率比、ドップ
ラー反応度について同等の結果が得られるものの、Naボイド反応度価値を
6-12%過大評価する。
Naボイド反応度の評価手法については、サイクル機構が3次元X-Y-Z、原研
が2次元R-Zと方法が違う上、摂動計算に用いているPERKEYコードは3次元
X-Y-Z体系での使用実績がない等の点が指摘された。また、ドップラー反応
度もサイクル機構の手法によると温度依存性がある点が原研の結果と異な
る。サイクル機構は18群計算(原研は70群)であるが、サイクル機構の群縮約
補正係数には温度依存性がない。サイクル機構CASUP、原研SLAROM両コード
の背景断面積の違い等の可能性も述べられた。サイクル機構も今後は70群
計算を基準とするとのこと。また、このFCA解析と関連して、サイクル機構
の手法によるZPPR-9のドップラー反応度の計算値は実験値との相違が見ら
れたが、FCAのドップラー反応度解析値では差異は小さく、ZPPRの実験値に
対する疑問の声もあった。
5) TCA実験ベンチマーク問題(資料5)
UO2およびPuO2-UO2燃料TCA炉心のベンチマーク計算のレポート(ドラフト版)
が示された。今回は臨界性のみであるが、今後修正転換比(C8/F)や出力分
布マッピングも追加予定である。ベンチマークモデルとしては単ピン円筒型
セル+臨界バックリング、2次元X-Y体系+軸方向バックリング、およびモンテ
カルロ計算用の全炉心体系の3種類のモデルで与えられる。TCAには燃料棒が
軽水減速材の水面より上に出た(dry lattice)部分があるため、決定論的手
法では体系の軸方向のモデル化が難しくなるとのこと。
JENDL-3.2を用いたモンテカルロ法(MCNP)全炉心計算では、U炉心で増倍率
を過大評価しており、これはJENDL-3.2の傾向である。また、Pu炉心では特
に最も水/燃料体積比の小さな2.42PU炉心で増倍率を他炉心より大きく過小
評価している。これについてはMVPによる計算(資料10)でも過小評価傾向が
見られるものの、これほどではなかった。
拡散計算による解析例を示した箇所で17群構造を用いているが、高速炉の
ベンチマーク同様に詳細群計算(例えば70群、SRACなら107群)で良いのでは
ないかとコメントがあった。また、熱エネルギー領域の上限(thermal cut
off)エネルギーを0.993eVとしているが、特にPu炉心では240Puの1.06eV共
鳴の扱いに問題が出る。SRACシステムではPu炉心でthermal cut offにより
増倍率が大きく変化するため、cut offエネルギーとして2.38eVを推奨して
いる等の議論もあった。
6) マイナーアクチニドデータの現状(資料6)
マイナーアクチニドの断面積は、京大原子炉実験所での新しい測定結果が
揃っている。数百keV以下でJENDL-3.2の237Np核分裂断面積が他のライブラ
リと比べ大きいのは京大炉のデータを取り入れたため。241Am核分裂断面積
は数十から200eVでJENDL-3.2とENDF/B-VI.5に差があり、京大炉の測定値は
ENDF/B-VI.5を支持する。243Am核分裂断面積は100keV以下で評価値間に差
が見られ、京大の測定はJENDL-3.2とENDF/B-VI.5の中間くらいである。Cm
核種では評価値間の差が大きいが、ENDF/B-VI.5には古いデータが与えられ
ている。熱中性子領域ではJENDL-3.2の値と測定値はおおむね一致している
が、241Am捕獲断面積が最近の測定値を大きく下回っている。この測定値に
も疑問点があり、今後の検討が必要。京大の測定値を重要視するのは、エ
ネルギー分解能は低いものの測定の精度そのものが高いためであるとのこ
と。また、フランスMistral実験では237Npや241Am等の反応率比で解析値に
フランスと差が見られたが、JENDL-3.2とJEF-2.2の評価には大きな差はな
いように見える。
7) 235U核データの現状(資料7)とベンチマーク(資料8)
JENDL-3.3に向けてLeal-Derrienの共鳴パラメータの採用する方向である。
また、核分裂スペクトルがENDF/B-VI.5と異なっているが、修正方針は未
定。核分裂スペクトル平均断面積を見ると、JENDL-3.2は実験値より低めの
値を与える。ENDF/B-VI.5でもLeal-Derrienの共鳴パラメータを採用し、ν
値の見直しも行っている。
熱中性子炉のベンチマークでは、特にSTACY等スペクトルの軟らかい炉心で
JENDL-3.2は増倍率を大きく過大評価する。JENDL-3.2の共鳴パラメータ、
共鳴パラメータとν、核分裂スペクトルをそれぞれENDF/B-VI.5のものと置
き換えたケースではいずれも過大評価傾向を改善し、STACYやTRACYでは核
分裂スペクトルの効果が大きかった。これら3つの置換を同時に行うとほぼ
ENDF/B-VI.5相当の評価となる。現状では、古い実験であるTRX炉心を除く
TCA、JRR-4、STACYおよびTRACYの各炉心で、ENDF/B-VI.5の臨界性予測精度
が最も優れている。
8) JENDL-3.2に基づく統合炉定数(資料13)
JENDL-3.2をベースに、JUPITER臨界実験185核特性の最新のC/E値を反映し
て調整を行った統合炉定数JFS-J3.2(ADJ98)を作成した。239Puおよび235U
核分裂断面積、238U非弾性散乱断面積等にJENDL-3.2の標準偏差いっぱいの
調整を加える等した結果、臨界性予測精度は以前のJFS-3-J2(ADJ91R)同様
良好であり、濃縮ウラン領域つき炉心の制御棒反応度径方向依存性、Naボ
イド反応度等のC/E値が改善された。炉定数調整により、特に臨界実験で測
定できない燃焼欠損反応度の精度向上が可能であり、60万kWe級FBR炉心の
主要核特性評価においても燃焼欠損反応度に大きな影響が見られた。
様々な改善効果の一方、F25/F49反応率比を全炉心全領域を通じて過小評価
するようになったが、一応測定誤差2-3%の範囲内に入っている。これにつ
いては、ドライバ領域に235Uを多く含むFCAの各炉心を今回の炉定数を用い
て計算してみたらどうか、あるいはFCAも含めて炉定数調整を行ってみては
等のコメントがあった。
9) PHYSOR'98報告(資料10、11)、OECD/NEA消滅処理ベンチマーク紹介
(資料11、12)
PHYSOR'98のプロシーディング等により紹介された。
10) イナートマトリクス燃料ベンチマーク(資料9)
第2期ベンチマークとして、UO2あるいはMOX燃料ピン5x5の小集合体の中心
に1本イナートマトリクス燃料(IMF)ピンを配置した体系のベンチマーク計
算が実施された。JENDL-3.2は増倍率を高く見積り、SRACはIMFピンの相対
出力を高く評価する。今後は各参加者による結果の修正、まとめを行い、
次に集合体単位でのUO2あるいはMOXとIMFの非均質体系ベンチマーク問題を
実施する予定である。
11) 今後の予定
当WGの幹事である原研高野氏が多忙のため、幹事の交代が提案された。熱
中性子炉、高速炉の各分野から1名ずつ出すべき、原研の人の方が都合が
よい等の意見が出され、原研の中島氏と大井川氏が次回からの幹事役とし
て推薦された(承認は?)。今後、年2回のWG開催を目標に活動を行う。
次回開催日時、場所は未定。