シグマ研究委員会平成15年度第1回核種生成量評価WG議事録 1.日時 2003年12月10日(水)13:00〜17:00 2.場所 日本原子力研究所東海研究所第2研究棟2階221会議室 3.出席者(敬称略) 奥村啓介(原研;グループリーダー)、青山卓史(JNC)、大木繁夫(JNC)、 名内泰志(電中研;松村代理)、金子俊幸(日本総研)、青山肇男(日立)、 松本英樹(三菱重工)、小坂進矢(テプコシステムズ)、安藤良平(東芝)、 山本宗也(GNF-J)、横山賢治(JNC;オブザーバー)、片倉純一(原研;部会長)、 辻本和文(原研;発表者) 4.配布資料 15-1-1 シグマ研究委員会平成14年度第2回核種生成量評価WG議事録(案) [奥村] 15-1-2 核種生成量評価WGの平成14年度活動と15年度計画 [奥村] 15-1-3 MCNP+ORIGEN2によるBWR-UO2&MOX燃料(ARIANE)のPIE解析 [安藤] 15-1-4 SRACとMVPの整備状況 [奥村] 15-1-5 JENDL-3.3に基づくORIGEN2コード用高速炉断面積ライブラリ [大木] 15-1-6 Target accuracy of MA nuclear data and progress in validation by post irradiation experiments with the fast reactor "JOYO" [大木] 15-1-7 高速炉における重金属核種燃焼の核データライブラリ依存性 [大木] 15-1-8 PFR照射資料の解析 [辻本] 15-1-9 ORIGEN-2の要求精度について [松本] 15-1-10 「ORIGEN計算の要求精度」の考え方について [松村] 15-1-11 「ORIGEN計算の要求精度」の纏め方(案) [松村] 15-1-12 「ORIGEN計算の要求精度」に関するアンケートの集計(案) [WG] 15-1-13 「燃料貯蔵プールでのγ線と中性子の発生率比」 [名内] 15-1-14 報告書作成目次(案) [奥村] 5.議事内容 5.1 平成14年度第2回核種生成量評価WG議事録の確認 配布資料15-1-1に基づき、前回議事録案が確認され了承された。 5.2 核種生成量評価WGの平成14年度活動と15年度計画 (奥村) 奥村氏が、配布資料15-1-2に基づき、H15年度第1回シグマ委員会運営委員会(H15年 6月12日開催)における核種生成量評価WGの活動報告の内容を紹介した。H15年度は、こ れまでの作業の整理と詰めを行い、年度末を目処に活動成果を報告書として公表するこ と、また、JENDL-3.3に基づくORIGENライブラリについては、引用できるドキュメント を公刊して正式な公開を急ぐ方針とすることが述べられた。 WGを退任した大川内氏が担当していた常陽PIE解析については、サイクル機構が継続 して検討を進めることが述べられた。また、同PIE解析で、大幅な過大評価が報告され ていたAmとCmの生成量については、当時の分析結果が誤っており、今後は修正結果を報 告するとのことであった。 5.3 MCNPとORIGEN2コードによるARIANEのBWR-UO2&MOX燃料PIE解析 安藤氏が、配布資料15-1-3に基づき、ARIANEプログラムで取得されたオランダの実機 BWR燃料のPIE解析の結果を報告した。 解析には、モンテカルロ燃焼計算コードシステムMCNP/ORIGEN2を使用し、主要核種の 断面積ライブラリはJENDL-3.2、FP収率と半減期データはJNDC-V2に基づいている。 Am-241の生成量は、UO2燃料で約20%の過大評価、MOX燃料(ウラン燃料ベースの集合 体の燃料棒)ではサンプル毎のばらつきが大きいが50%程度の過大評価が見られた。Cm同 位体核種については、Cm-242、Cm-244、Cm-245に対して、それぞれ、-15%、-5%、+20% である。FP核種については、特にAg-109に200%前後の大幅な過大評価が見られ、この点 について、質量数に対するFP収率の勾配は100前後で急峻であり、収率データに問題が あるのではないかとの考えが述べられた。 本報告に対し、Cm-244とCm-245のC/E値の傾向は、これまでWGで報告されてきた日本 の軽水炉のPIE解析の結果(20%程度の過小評価)の傾向と異なっており、この点について 今後検討を要することがコメントされた。 5.4 SRACとMVPの整備状況 奥村氏が、配布資料15-1-4に基づき、燃焼計算に係わるSRAC及びMVP-BURNの最近の整 備状況を紹介した。SRACとMVPについては、JENDL-3.3、ENDF/B-VI(R8)、JEFF-3.0に基 づく任意温度ライブラリが使用可能となった他、JNDC-V2に基づく最大227核種を陽に扱 う熱炉及び高速炉解析用のチェーンデータが整備された。また、PC法の導入、ボイド率 やボロン濃度履歴追従など燃焼計算の機能が強化された改良版SRAC(MOSRA-SRAC)が開発 された。これらのコード及びデータの公開について質疑があり、開発段階にあるMOSRA- SRAC以外は提供可能との返答がなされた。 5.5 高速炉解析用ORIGENライブラリと常陽PIE解析 大木氏が、配布資料15-1-5に基づき、高速炉解析用のORILIBJ32の見直しとJENDL-3.3 ベースのORIGENライブラリの作成状況について報告した。 ORILIBJ32の見直しは、主としてJFS-3ライブラリの改訂とライブラリ作成ツールの改 良によるものであるが、常陽MK-I用ライブラリについては、縮約スペクトルの扱いにミ スがあったことが報告された。 JENDL-3.3ベースのORIGENライブラリについては、サイクル機構によりプロトタイプ 版が作成され、60万kWe級酸化物燃料炉心に対して、ORILIBJ32による解析値との比較が 示された。 5.6 MA核種データの精度と常陽PIE解析 大木氏より、配布資料15-1-6に基づき、MA核種データの高速炉サイクルシステム評価 に対する影響度と常陽PIE解析の結果について報告があった。 先ず、典型的な高速炉とその使用済み燃料を想定して、崩壊熱、中性子発生量、γ線 放出量、臨界性、ボイド反応度、燃焼反応度損失の評価に対する、核種及び反応の寄与 と核データの不確かさによる影響が示された。解析結果より、MAデータの不確かさの影 響は総じて小さいが、Am-241捕獲、Am-241核異性体比、Am-243捕獲、Cm-242捕獲、Cm- 244捕獲反応については、データの精度向上が望まれることが述べられた。 引き続き、常陽MK-Iドライバー燃料のPIE解析の結果とこれまでに得られているMAサ ンプル照射解析の結果が報告された。MK-IのPIE解析結果では、サンプルによるばらつ きが大きいがPu-242の過大評価の傾向が見られた。MK-I燃料の解析では、これ以上の フォローアップが困難であり、今後はデータの信頼性が高いMK-IIドライバー燃料のPIE 解析を中心に検討を進める方針であることが述べられた。 MAサンプルの照射後試験では、最初のAm-243サンプルの分析結果が出ており、 Cm-244/Am-243及びAm-242m/Am-241組成比に対して、JENDL-3.3を含む主要な核データに よる解析結果が示された。また、Am-241捕獲反応の核異性体比依存性が示され、た。そ の解析結果から、Am-241核異性体比については、JENDL-3.3の約0.7よりは、0.85程度の 値が妥当と考えられることが示された。 5.7 PFR照射試料の解析 辻本氏より、日米アクチナイド共同研究プログラムとして実施された高速炉(PFR)に おけるアクチナイド試料照射後試験のJENDL-3.2及びJENDL-3.3による解析結果が報告さ れた。照射サンプルは、Th-230からCm-248までの21同位体試料である。一連の解析結果 の考察から、JENDL-3.3のMA断面積(高速炉エネルギー領域)の問題点として、1)Pu-238 とCm-246の核分裂断面積、2)Pu-242の捕獲断面積、3)Am-241捕獲反応の核異性体比、 4)Cm同位体のNd-148核分裂収率が挙げられた。Am-241の核異性体比については、実験解 析の結果から0.85〜0.86が妥当であると報告された。 5.8 Am-241核異性体比についての議論 高速炉用のORIGENライブラリ作成において、Am-241の核異性体比にJENDL-3.3の評価 に基づく値(約0.7)を採用するかどうかについて議論がなされた。 奥村氏より、Am-241の核異性体比については、最近、LANLの河野氏が過去にLANLで得 られた実験データを基に次期ENDF/B-VIIのために評価した最新のデータがあり、これを 使用すると高速炉エネルギー領域の1群値は約0.85になることが報告された。河野氏の 評価データと、サイクル機構のMA照射後試験の解析結果、辻本氏のPFR試験の解析結果 による傍証を踏まえ、当WGとしては、JENDL-3.3よりも河野氏の評価データを推奨し、 高速炉用のJENDL-3.3ベースのORIGENライブラリではこれをベースにした値(約0.85)を 採用することとした。なお、河野氏の評価データについては、現在公式に引用できる文 献は無いが、核データセンターの中川氏が2003年核データ研究会で関連する発表をして おり、その内容がプロシーディングに掲載される予定である。ORIGENライブラリのドキ ュメントには、他に適切な文献がなければ、これを引用することとした。 5.9 ORIGEN計算の要求精度について 松本氏から、配布資料15-1-9に基づき、資料15-1-12における各項目の数値データの 根拠となっている考え方が示された。また、名内氏からは、松村氏が作成した資料15-1 -11に基づき、纏め方の案が述べられた。議論の結果、アンケート回答機関名は削除し、 松本氏の資料のように数値データの根拠となる考え方を明記する方向で、ORIGEN計算の 要求精度(案)資料を見直して纏めることとした。また、要求精度の数値については、可 能な限り核種生成量として評価するのが良いとのコメントが出された。 資料の見直しにおいては、松村氏と松本氏が中心となり、回答機関の項目の記述につ いて、安藤氏、青山卓史氏、青山肇男氏、内藤氏が協力して担当することとなった。 5.10 燃料貯蔵プールでのγ線と中性子の発生率比 名内氏より、外部源を使用しないで、高エネルギーγ線と中性子発生数比から使用済 み燃料貯蔵プールにおける未臨界度を同定する技術の開発研究について紹介された。 5.11 WG活動報告書作成について 奥村氏より、WG活動報告書の目次案(資料15-1-14)が示された。原研の2003年度報告 書の原稿締め切りには間に合わないので、次年度早々に原稿を纏めて報告書を刊行でき るよう、各執筆担当者は原稿を準備するよう要請があった。また、ORIGENライブラリに 採用するAm-241核異性体比の根拠として、辻本氏にも今回の発表内容について執筆をお 願いすることとした。なお、報告書の作成においては、データ集的な詳細な内容は執筆 者が属する各機関の報告書として纏め、WG活動報告書にはエッセンスとなる内容を掲載 することとした。 JENDL-3.3ベースのORIGENライブラリのドキュメントについては、軽水炉用について は片倉氏が、高速炉用についてはサイクル機構が執筆担当し、片倉氏が全体の編集を行 うこととなった。 (以上)