リアクター積分テストワーキンググループ議事録(案)
日時 : 平成17年2月23日 (水) 13:30 - 17:00
場所 : 日本原子力研究所 東海研究所 第2研究棟2階 221会議室
出席者 : 石井一弥、瑞慶覧篤(以上日立)、菊池茂人(JNES山本代理)、北田孝典(阪大)、
小坂進矢(テプコシステムズ)、田原義壽(エンジニアリング開発)、羽様平(JNC)、
山本宗也(GNF-J)、三好慶典、長谷川明、岡嶋成晃、奥村啓介、秋江拓志、
森貴正(以上原研)
発表者 : 白木貴子(三菱)、中川庸雄、辻本和文(以上原研)
欠席者 : 岩崎智彦(東北大)、池田一三(三菱)、石川眞(JNC)、宇根崎博信(京大炉)、
高野秀機(茨城大)、大井川宏之(原研)
配布資料 :
資料16-1-1 リアクター積分テスト議事録(案)
資料16-1-2 PFRでのMA照射試験の照射後分析と燃焼解析
資料16-1-3 BWR-MOX炉物理試験(FUBILA計画)
資料16-1-4 ENDF/B-VIIの235Uと238Uのデータ
資料16-1-5 ENDF/B-7 preliminary のFCAベンチマーク
資料16-1-6 JENDL-4のためのベンチマークシステムの構築
資料16-1-6' Criticality Benchmarks with a Continuous-Energy Monte Carlo Code
MVP and JENDL-3.3
資料16-1-7 Analysis of MOX Critical Experiments with JENDL-3.3
議題 :
(1) 前回議事録
コメントがある場合は、早めに森WGリーダーあてに連絡をしてもらう。
(2) PFR での MA 照射試験の照射後分析と燃焼解析 (原研 辻本氏)
資料16-1-2に基づき説明された。PFR では、Th から Cm まで21種類のアクチノイド
の同位体の濃度90%以上の試料を、最大45at.%の燃焼度までの照射し、高速炉体系での
MA 断面積データの検証に有用なデータを得ている。
JENDL-3.3、ENDF/B-VI.8、JEFF-3.0 を用いた解析では U-234、Pu-238、Cm-244 の捕
獲反応にライブラリ間の相違がみられた。また、化学分析値との比較から、上記の反応
のほか、Pu-238 の核分裂反応、Pu-239 捕獲反応、Am-241 捕獲反応の分岐比、Cm-243
と Cm-244 の捕獲反応の評価値等が分析値との差異の原因として考えられる。また、今
回核分裂量の評価に用いた、Nd-148 核分裂収率データにも検討の余地がある。
解析に用いた Nd-148 核分裂収率や断面積縮約用中性子スペクトルデータに関する議
論のほか解析データの公開に関する質問があった。
(3) JENDL-3.3 の MOX 臨界実験に対する適用性 (三菱重工 白木氏)
JENDL-3.3、ENDF/B-VI.8、及びこれらのライブラリーの U-235 と U-238 をENDF/B-
VII preliminary と置き換えたライブラリーを用いて、VENUS 実験施設で実施された、
原子炉級 Pu 高富化度MOX(12.6wt.% Pu)燃料テスト領域(ドライバー燃料は UO2)を持つ
軽水炉臨界実験解析を実施した(資料16-1-7)。
臨界性の計算では、JENDL-3.3 の U-235 と U-238 を ENDF/B-VII pre. と置き換え
たライブラリーの結果がもっとも良い。JENDL-3.3、ENDF/B-VI.8 ともに増倍率を過小
評価するが、JENDL-3.3 の方が臨界性の予測精度が高かった。U-235 と U-238 をENDF/
B-VII preliminaryと置き換えた時の効果は、ENDF/B-VI.8 の方が JENDL-3.3 より大き
い。VIP、VIPEX、VIPO の3つの実験間での増倍率の差異は、いずれのライブラリーでも
小さかった。
出力分布測定や、VIPO 実験においてボイドボックスを設置した測定とその解析に用
いた計算方法に関する質問、炉心全体での核分裂反応への寄与率は U-235 がほとんど
である等の議論があった。
(4) BWR-MOX 炉物理試験 (FUBILA 計画) (JNES 菊池氏)
資料16-1-3により、軽水炉臨界試験装置EOLEを用いた BWR-MOX炉物理試験FUBILA計画
の概要が紹介され、MVPを用いた解析結果がBASALAやMISTRAL等これまでの実験の解析結
果と比較して示された。
今回テスト領域のMOX燃料 は新規に用意されたAm-241割合の少ない燃料であり、一方、
ドライバー領域には EPICURE 実験以来の古いMOX燃料が用いられている。JENDL-3.2を
用いた予備的な解析では臨界固有値が1.0027となり、EPICUREから MISTRAL、BASALA 実
験へと時間とともに増大していた過大評価傾向が6%近く下がった。
テスト領域の新しい MOX 燃料とドライバー領域の古い MOX 燃料の、核分裂反応や増
倍率に対する寄与率は同程度という議論があった。また、FUBILA 計画における Am-241
に着目した試験の予定に関する質問があった。
(5) ENDF/B-VII preliminary の概要 (原研 中川氏)
2005年1月時点における ENDF/B-VII U-235 及びU-238データのENDF/B-VIからの主な
変更点が、資料16-1-4を用いて説明された。
U-235では、核分裂断面積で最大10%程度の変更があり、JENDL-3.3に近づいた。U-238
では分離共鳴パラメータが改訂され、核分裂、捕獲断面積ともに変更がみられる。核分
裂断面積は共鳴領域以下の変更は断面積が小さいので影響は少ないと考えられる。1MeV
以上では JENDL-3.3 と同様の値になった。一方捕獲断面積は共鳴領域から熱領域にかけ
て ENDF/B-VI.8 (や JENDL-3.3) よりも小さくなり、0.0253eVでは WPEC/SG22の推奨値
となっている。20keV以上ではJENDL-3.3に近づいた。また、U-238では核分裂スペクトル
も改訂された。
本WGでの各発表者が用いた ENDF/B-VII preliminaryのバージョンの違いの有無、END
F/B-VII最終版の公開時期等の質問があった。
(6) ENDF/B-VII preliminary の FCA ベンチマーク (原研 岡嶋専門委員)
U 同位体の ENDF/B-VII preliminary核データの妥当性検証のため、FCAの高濃縮(93%)
U 燃料を用いた IX 炉心シリーズと、常陽 Mark IIモックアップの X 炉心シリーズの
解析を行ない、JENDL-3.3 や ENDF/B-VI.8 と比較した(資料16-1-5)。
JENDL-3.3 のU-235とU-238 断面積をENDF/B-VII preliminaryで置き換えるとJENDL-3.3
に比べ増倍率を1%程大きく評価する。FCA IX 炉心シリーズは IX-1 から IX-6 炉心へ中
性子スペクトルが順に硬くなって行き、特に IX-1 から IX-3 炉心は U-235 の断面積に
対して増倍率が感度を持つエネルギー領域が keV 領域から高エネルギー側へ徐々にシフ
トする。ENDF/B-VII preliminaryのU断面積を用いた解析では、IX-1 炉心からIX-3 炉心
へ増倍率過大評価傾向が大きくなり、JENDL-3.3同様のスペクトル依存性が見られた。
この、U 炉心における増倍率予測値のスペクトル依存性の解決に向けた課題等につい
ての議論があった。
(7) JENDL-4 のためのベンチマークシステムの構築 (原研 奥村専門委員)
資料16-1-6 により、ベンチマーク解析の効率化や炉物理実験データの整理・保存等
を目的とし開発中の、ベンチマークシステムとその活用例が紹介された。
ベンチマークシステムのために、約900ケースのICSBEPハンドブックの体系を含む国
内外の臨界性ベンチマーク、および臨界性以外の測定を含むベンチマークテストの対象
を選定した。これらに対し、統一書式化した MVPコード入力データ、MVP出力編集ユー
ティリティ、EXCELによる結果整理の効率化等を含むシステムの構築を、2005年度末の完
成を目標に行なっている。活用例では、低濃縮U燃料熱中性子炉での増倍率のU濃縮度依
存性が、JENDL-3.3のU-238データを ENDF/B-VII preliminaryと置き換えることによって
改善される様子が、10数炉心の解析値を整理グラフ化した結果等によって示された。
決定論的計算手法用のデータもあった方が良いのではないか、高温運転状態や燃焼が
進んだ条件の解析が可能な実機に基づくベンチマーク問題もあると有用であろう、等の
議論がなされた。なお、選定炉心のうち MISTRAL や BASALA 等の実験データはまだ公
開されていないとのコメントもあった。
(8) 今後の予定
森WGリーダーより、2005年度からリーダーをサイクル機構、石川眞氏に交代したいと
の提案がなされ、了承された。2005年度の活動方針は、石川新リーダーを中心にまとめ
られる予定。