核データ研究グループ

核データ測定研究

飛行時間法を用いた中性子捕獲断面積測定法
加速器で得られるパルスビームを中性子源に照射すると、そこからパルス状の中性子が飛び出してきます。この中性子源(Source)から離れた位置 にある試料(sample)に到達する中性子は、照射から時間が経過に従い速い中性子から次第に遅い中性子に変わっていきます。この中性子の速度は、 中性子が中性子源から試料までの距離を飛行するのに要する時間から求めることができます。 中性子が試料に捕獲されると、すかさずガンマ線を放出する(即発ガンマ線)ので、加速器のビーム照射からガンマ線が検出される時間の差で、 どの速度の中性子が捕獲されたかを求めることができます。

飛行時間法(Time-Of-Flight(TOF))は、加速器のパルスビーム照射からガンマ線の検出される時間と測定し、 中性子のエネルギーを決定すると共に、中性子のエネルギーによる反応断面積変化を測定する方法です。
tof
飛行時間(TOF)法の原理


ANNRI施設
世界最高強度の中性子パルスビーム源である大強度陽子加速器施設(J-PARC)の物質・生命科学実験施設(MLF) に中性子核反応測定装置(ANNRI)を整備しました。
ANNRI
ANNRI

全立体角Geスペクトロメータ
全立体角Geスペクトロメータ
核燃料の有効利用による経済性向上や放射性廃棄物の削減による環境負荷低減化を評価するためには、 マイナーアクチノイド(MA)や長寿命核分裂生成物(LLFP)等の中性子捕獲反応断面積データの精度を向上させる必要があります。 しかしながら、これらの核種は放射性であるため正確な測定を行うのが困難であり、 高精度な測定のためには大強度のパルス中性子源及び高性能の検出器が不可欠でした。 このような背景のもと、世界最高強度の中性子パルスビーム源である大強度陽子加速器施設(J-PARC)の 物質・生命科学実験施設(MLF)に中性子核反応測定装置(ANNRI)を整備し、 ANNRIに設置した「全立体角Geスペクトロメータ」を用いて、MAやLLFPの中性子捕獲反応断面積測定を開始しました。

MEXT委託事業として開発された中性子核反応測定装置(ANNRI)は、日本原子力研 究開発機構がMEXTより物品無償貸付の承認を平成23年6月22日に受け、「パルス 中性子を用いた原子核科学研究及び中性子核反応測定装置を用いた測定・分析技術の 促進」用に使用することが認められました。これにより、2011年度下期(2011B期)よ り、実験課題公募の受付が開始可能となりました。申請方法は、以下のサイトをご参 照ください。http://j-parc.jp/MatLife/ja/index.html実験装置(ANNRI)の 詳細な情報については、上記サイトに記載された実験装置担当者までお問い合わせく ださい。 興味を持たれた皆様の参加を歓迎いたします。


研究成果
MAやLLFPの中性子捕獲反応断面積の測定結果の一例として、 重要なMA核種の一つである244Cmの結果を図2に示します。 244Cmの場合、半減期が18.1年と短く比放射能が高いため微量の試料しか利用できない(測定試料は重量0.6mg、放射能は1.8GBq)、 バックグランドとなる崩壊γ線の影響が大きい、不純物として混じりこむ245,247Cmの核分裂反応断面積が大きい等の困難さがあるため、 過去には1971年の地下核実験での測定値が1件あるのみでありました。 そこで、高精度のバックグラウンド評価技術や核分裂反応の影響を評価技術等の開発を行い、 1~300 eVの範囲で中性子捕獲反応断面積を得ることができました。特に20 eV以下の共鳴については計算結果による評価値しかなく、 世界で最初の実験値であります。 また、今回の結果から、ANNRIでは1 mg 以下の強い放射性試料でも十分に中性子捕獲反応断面積の測定が可能であることが示されました。 ANNRIは平成23年3月の大震災により大きなダメージを受けたものの復旧が進行し、翌平成24年2月より供用を再開いたしました。 ANNRIでは大強度のパルス中性子ビームと「全立体角Geスペクトロメータ」の核種弁別性能を活かし、 中性子捕獲反応断面積測定だけでなく、宇宙核物理研究や微量分析等、幅広い応用研究が実施・予定されております。
244Cmの結果
244Cmの結果
ANNRI施設 に関するお問い合わせは http://j-parc.jp/MatLife/ja/index.html Modified at 2014/08/08 11:29 [JST]

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