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シグマ研究委員会・核データ専門部会
PKAスペクトルワーキンググループ1994年度第2回会合議事録
日 時: 平成7年3月9日(月) 13:30〜17:30
場 所: 原研本部第5会議室
出席者: 有賀、池田、千葉、深掘(原研)、岸田(CRC)、杉(広領域)、
真木(日立)、村田(NFD)、喜多尾(データ工学)、
山野(住原工)、渡辺(九大)、川合(東芝)、
M. Chadwick(招待講演者: LLNL)
配布資料:議事録(H6.9.12WG会合, H7.3.1 ユーティリティーグループ)
PKA-94-08 PKA/KERMAファイル化システムESPERANTの現状(II)(深堀)
PKA-94-09 EXIFONの改造(村田)
議 事:
1.前平衡理論による陽子核反応データと光核データの計算(M. Chadwick)
KERMA因子と光核データは、5%の精度が要求される中性子や陽子照射治療の際の被ば
く評価で重要であり、LAHETコードでのモンテカルロ計算による被ばく線量の評価例が
示された。その基礎データである中性子ならびに陽子核反応データと光核データのう
ち2次粒子の角度分布の計算法として、FKK理論やChadwickが提唱する新しい前平衡理
論などが紹介された。そして、 90Zr(p,xp')、90Zr(p,n)反応や12C(γ,p)反応につい
て、上記理論とGNASHコードを組み合わせた計算例が示された。
2.前回記事録の確認
3月1日のユーティリティーグループ会合の議事録の確認に付随して、PKA/KERMAの2
次ファイルには DPA断面積の代わりに原子弾き出しの閾エネルギーεdを除いた
displacement-kermaを格納することで合意した。
3.ESPERANTコードの整備
配布資料 PKA-94-08 により、前年度作成した実効的単一粒子放出モデルによる
PKA/KERMAデータファイル作成コードシステムESPERANTの問題点と整備状況が深堀委員
から説明された。
PKARモジュールについては、スペクトルの平均化の方法を修正し、重心系と実験室
系の変換法を高精度化した。 また、 入射および放出エネルギーのビン幅を可変にし
た。さらに PKAスペクトルデータ(2重微分断面積: DDX)の容量を減らすために点数
を間引く処理のため内挿法を検討している。また、KERMAモジュールについては、DPA
断面積の計算値が既存のRADHEAT-V4コードの値と一致せず、その原因を調べている。
さらにKERMA因子の計算の検証を行っている。PKAスペクトルなどの計算結果をプロッ
トするPKAPLOTモジュールは千葉委員がファイル化グループ作業として開発中の PLDDX
コードで代用することにした。
PKARモジュールは、DDX の内挿処理を除けば完成しているので、核融合炉用の国際
統一ファイルFENDL用としてJENDL-3.2を処理して27Alから209Biまでの69核種のPKAフ
ァイルを作成した。
処理に要した CPU時間は全部で25時間である。PKAファイルは対象エネルギー1.0E-5
eVから20 MeVまでの DDXデータを含み、150 Mbiteの容量である。
今後、KERMAモジュールの完成とMCEXITON, RADHEAT-V4, Doranの計算結果や実験デ
ータとの比較によるコードの検証を行う。なお、中性子発熱の実験データにはガンマ
発熱の寄与があるので、その補正が必要であることが述べられた。
4.作業進捗状況の報告
(1) 軽核の中性子核データの評価
村田委員より配布資料PKA-94-09により、NとOの中性子核データの評価に用いる
EXIFONコードの改造について報告された。改造の内容は入射粒子についてn,p,αから
n,p,γに変更したこと、反応チャンネルについてd, t, 3Heの放出を追加したことであ
り、d, t, 3Heクラスター形成断面積などの基礎データの計算とプログラムの書き換え
作業(80%終了)を実施した。プログラムはあと3〜4ヶ月で完成予定である。
千葉委員からは、渡辺委員と共同で上限エネルギーを80 MeVまで拡張して12Cのデー
タの再評価を行っているとの報告があった。また、QMD法の利用について質問があり、
ファイル化には未だ使えないとの回答がなされた。
柴田委員の9Beのデータ評価については、20 MeVまで終了した旨、深堀委員から報告
された。従来評価からの変更内容について問い合わせることとした。
(2) 混合物質の DPA断面積の計算法の調査
有賀委員から混合物質の取り扱い方について調査して、その結果を核データニュー
ス47号にて報告した旨の報告があった。混合物質の巨視的な DPA断面積は、近似的
には原子数密度の重みのみで作れるが、Greenwoodがより厳密な方法を1990
ASTM-STP-1640 p.636で提唱しており、SPECOMPコードが利用できる。
なお、核融合炉材料の照射実験において、照射量の表現に'dpa'の単位が使われてい
るので、基準となるDPA断面積を作成することの必要性がコメントされた。
5.作業計画検討
平成7年度作業計画について検討した。詳細は、以下のとおりである。
(1) 調査レポートの作成
1992〜1994年度作業の成果についてJAERI-Mレポートにまとめる。
調査報告書:軽核のOMP(山内)、ASTMの文献レビュー(有賀)、軽核につい
て50MeV以下の中性子核反応チャンネルと生成核、レベルスキームと分岐
比(村田)
ESPERANT: コードマニュアル(深堀、川合)
(2) 計算法の検討
軽核のPKAスペクトル計算(村田、高橋、岸田、千葉、深堀、柴田)
小グループ討議を適宜行う。開催依頼は川合委員を通じて行う。
ESPERANTの整備と検証
整備(深堀):5月完成を目標とする。なお、2次γ線(MT=202)によるPKAは含ま
ない。
精度検討…PKAについてモンテカルロ法やDoranの計算との比較(深堀、川合、
岸田)、KERMAやDPA断面積についての在来コードとの比較(山野、
真木:データ提供)
(3) ファイルの作成作業(深堀)と結果のレビュー(杉)
20MeV以下は69核種のPKAファイル作成済み。今後、その2次ファイル作成と軽核に
ついて作成するが、(2)の結果待ちである。
20MeV以上のデータは高エネルギー核データWGの結果待ちである。
第1次対象核種: 1H, 6Li, 7Li, 9Be, 10B, 11B, 12C, 14N, 16O, 27Al, Si,
Ca, 23Na, Cr, 55Mn, Fe, Ni, Cu, Ti, Zr, Ge, 93Nb, Mo,
Pb, Bi
(4) KERMA因子、PKAスペクトルの測定データの収集(池田)
関連実験データが出てきているので近いうちにまとめるが、PKAについては間接的
なデータしかない。データの所在について核データセンターに相談する。
FNSの大山氏が平成7年度後半に PKAスペクトルの測定実験を計画している。
DPA断面積やKERMA因子は、IRDFやREAL86などのライブラリーに格納されており、
ESPERANTコードでの結果と比較することにより、ベースになるライブラリーの問題点
もわかる可能性がある。(これについての作業は特に議論されず)
(5) ユーティリティーコードの検討(喜多尾、有賀、池田、真木)
3月1日の小グループ会合での討議により、ESPERANTコードならびにCORRECT-Jコー
ドなどの既存コードにより、WGで提供すべきデータがほとんど作成できるので、当
面ユーティティーコードは作成しないという結論が承認された。
ただし、具体的にデータを提供する場合、ユーザーの特別な希望が有るかもしれな
い。熱中性子炉についての調査を真木委員に委任した。
軽い核の DPA断面積はどのように扱うか問題になる。材料研究の立場からどんな問
題と要求があるかの調査を有賀委員に委任した。同様にSPECOMPコードの必要性の検討
についても引き続いて有賀委員に委任した。
6.その他
(1) 第9回ASTM-Euratom会議が1996年9月プラハにて開催予定であり、当WGも
contributeする予定で作業を進める。
(2) 次回のWG会合
日時: 1995年6月1又は2日13:30〜17:30(高エネルギーWG会合と続ける)
場所: 原研本部
議題: PKA, KERMAデータのユーザーの要求(IFMIF、軽水炉など)
軽い核のDPA断面積の扱い方
作業進捗状況の報告と問題点検討
その他
以上