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        シグマ研究委員会・核データ専門部会
  PKAスペクトルワーキンググループ1995年度第1回会合議事録(案)

日 時: 平成7年6月1日(木) 13:30〜17:30
場 所:  原研本部第5会議室
出席者: 有賀、池田、柴田、千葉、深掘(原研)、喜多尾(データ工学)、
	  杉(広領域)、真木(日立)、村田(NFD)、山野(住原工)、
	  川合(東芝)、大山(招待講演者: 原研)

配布資料:議事録(H7.3.9WG会合)
     PKA-95-01  国際核融合材料照射施設(IFMIF)の現状とPKAデータの
		     必要性(大山)
          PKA-95-02  PKA/KERMAファイル化システムESPERANTの
		     現状(III)(深堀)
     PKA-95-03  軽核の中性子核反応二次荷電粒子による損傷評価に
		     ついて(有賀)

議 事:
1.前回議事録の確認

2.(講演)国際核融合材料照射施設(IFMIF)の現状とPKAデータの必要性
 国際核融合材料照射施設(IFMIF)の現状とPKAデータの必要性(配布資料 PKA-
95-01)について、原研FNSの大山氏が講演した。概要は以下の通り。
 IFMIFは、重陽子線形加速器によるd-Li中性子源を基本とした核融合材料試験用の
中性子源であり、IAEA国際協力事業として、1990-1992年の技術検討WGの検討等を
経て、1995年から2年間の概念設計活動(CDA)に入った。その後、工学設計が
1999年ぐらいまで行われ、2000年に建設に入る予定である。参加は日本、米国、
EUとロシアの4極である。CDAはIFMIF執行小委員会(議長:近藤(原研))の下
に各4極で行われるが、とりまとめを以下のように分担している。
	加速器:米国、Liターゲット:日本、テストセル:EU。 また、ユーザーズ
グループが試験する立場でIFMIFの必要条件や概念設計を検討する。
照射場の条件は、試験体積 1リットル以上で 2 MW/m2以上の中性子壁負荷に相当する
連続中性子場を確保することである。中性子のスペクトル効果を見るために加速器は
ESNIT同様エネルギー選択型で、ビーム電流125 mAのもの2台で構成する。Liターゲッ
トはFMITの設計を基本とする。
 核融合材料の照射研究は、FNS等での低中性子束・高精度照射研究、JMTRや常陽
による重照射研究、FFTF/MOTAやHIFRでの高精度重照射研究と進んできたが、照射量
と損傷の相関を評価する上で核融合炉と核分裂炉の中性子スペクトルの差が問題であ
る。反応の素過程を反映したPKAは、核融合条件下の照射効果を既存の照射手段を
用いて推定するために(仲立ちとして)利用できる。すなわち、PKAスペクトルは、
KERMA、DPAの積分量評価や照射損傷解析の基礎データとして利用できる。
  講演後、要求されるデータの質や書式等に議論があったが、材料研究者はそうした
データの存在を先ず問題にしており、WG活動のPRの必要性がわかった。従って、
先般、FENDL用に作成した69核種のJENDL PKAスペクトルデータファイルについて、そ
の取り扱い方を早急に決める一方、IFMIFの利用系の人たちにPRすべき点で意見が
一致した。

3.軽核の中性子核反応二次荷電粒子による損傷評価について
  配布資料 PKA-95-03により表記の件について有賀委員から報告された。高エネルギ
ーの中性子による軽核の反応においてはブレークアップ反応などで3体以上に割れた
りし、どの粒子をPKAとして特定することが難しい。また、その反応で生じた2次
粒子によっても媒質原子は格子点から弾き出される。しかし、これまでのDoranらに
よるDPA断面積には、その量が含まれていない。その評価法としてイオン照射の損
傷理論に基づく方法が紹介された。そして、イオン照射の損傷分布計算コード 
E-DEP-1の Bethe-Blochの阻止能式領域への拡張版 E-DEP-1(EXT), T.Aruga et al.: 
NIM, B33, 748(1977)を用いた計算例が示された。すなわち、15 MeVの中性子による鉄
の(n,xα)反応の場合、荷電粒子放出の反跳による弾き出し断面積は600-700 bである
が、放出α粒子による弾き出し断面積は、5-10 bと小さい。一方、炭素の場合には、
α粒子による弾き出しが数10 bと荷電粒子放出による反跳分に匹敵する値が見積もら
れ、その影響の大きいこと分かった。
 今後、炭素など軽核での評価済み核データを用いて実際的な評価を行い、DPA断
面積の計算法を確立する。

4.作業進捗状況の報告ならびに今後の作業計画軽核
(1) 調査レポート
 ここ2ヶ年の調査結果についてのレポートであるが、報告書作成の作業進捗も無く、
データ評価など実作業が進捗中でもあるため、今後の成果を織り込むこととして当面
中断することとなった。

(2) 軽核の中性子核データの評価
 柴田委員からLi-6, 7とBe-9の評価について報告があった。Be-9は、FENDL向けに
20 MeV以下のデータ評価終了し、ファイル化した。JENDL-3.2からの変更内容は、
中性子やα粒子のスペクトルであり、実験室系のDDXの形でデータを与えた。20 
MeV以上の評価については、パラメータを検討する。また、Li-6, 7の評価はSCINFUL
を改良して行う。現在、チャンネル断面積の計算を行っている。年内に結果を出す予
定である。
 千葉委員からは、C-12の評価について報告があった。対象エネルギー域を80 MeV
まで拡張して評価を進めている。SCINFULコードでの分岐比のデータを変更しながら
吟味している。今回、(n,n3α)のデータを換えたらKermaがおかしくなったとのこと
である。
 村田委員からは、NとOの中性子核データの評価について報告された。EXIFONコー
ドの改造を継続しているが、計算パラメータは反応チャンネルが多く系統性が取りに
くい為、元素別に設定する。光学モデルで反応断面積をフィットし、基礎的な定数の
計算は終了した。

(3) ESPERANTコードの整備
  配布資料 PKA-95-02 により、前年度作成した実効的単一粒子放出モデルによる
PKA/KERMAデータファイル作成コードシステムESPERANTの整備状況と今後の作業内容
について深堀委員が報告した。
 PKARモジュールについては、FENDL用にPKAデータ作成の必要が生じたため、コード
の修正・改良を行い、JENDLのPKAファイルを作成した。修正は、スペクトルの平均化
の方法、重心系と実験室系の変換法を高精度化、入射および放出エネルギーのビン幅
を可変化である。容量を減らすために点数を間引く処理のため内挿法の改良について
は、結果の信頼性を調べている。コードの修正版はPKAR2と呼称。KERMAモジュールは、
整備作業中である。修正内容は、DPA断面積計算値の既存のRADHEAT-V4コードの値との
食い違いの解消、PKARで内挿処理したfile 6データの再現、入射および放出エネルギ
ーのビン幅の可変化である。PKAスペクトルなどの計算結果をプロットする PKAPLOT
モジュールは、重心系と実験室系の変換の精度が悪い。一方、同様の機能を持つ汎用
のDDXプロット用処理コード PLDDXコードにも同様の問題を内包しているので、その修
正を待つことにした。
 コードの妥当性検討は下記のように行った。先ず、PKAR2コードについて、群平均処
理して得たスペクトルの元の核データファイルデータに対する再現性をチェックした。
ついで、岸田委員のMCEXITONによるAl-27とFe-56の結果と比較した。これらについて
は、データ処理上の精度で概ね納得の行く結果を得た。今後、ENDF/B-IVデータの処理
結果であるが、DoranによるPKAスペクトルとも比較検討する。KERMAコードについては
整備作業を通じて、kerma因子を他の計算値や実験値と比較、また、DPA断面積につい
てはRADHEATでの計算値やIRDF Dosimetry Fileとの比較検討を行う。さらに、ファイ
ル作成に対して、エネルギーメッシュの検討の必要性が述べられた。これには、アン
ケートの結果が参考になりそうである。
 これに関係して、真木委員から放出粒子の平均エネルギーによる簡易計算法で計算
したDPA断面積(FUSION-J3ライブラリーのデータ)が、RADHEATによる結果とほぼ
一致することが述べられた。

(4) ライブラリーの作成と結果のレビュー
 レビュー作業については、次回検討として、ユーティリティーコード検討グループ
に委ねることにした。

(5) 実験データの収集(池田委員)
 EXFORのインデックスを引く作業を終了し、今後まとめ作業に入る。Kermaについて
は、C-12などの軽核のデータがLANLや原研で、Kermaの積分データが原研FNSで測定さ
れているが、PKAデータについては間接的なデータしか無い。今後、阪大、東北大、
LANLで放出粒子のスペクトルの測定データが出る可能性が大きく、PKA計算コード
の妥当性検証に役立ちそうである。検証に役立ちそうなデータを早期にまとめて報告
する予定である。

(6) ユーティリティーコード
 軽い核のDPA断面積の計算法を検討し、ライブラリーとしてまとめる。また、混
合物質のDPA断面積の計算法の調査のため、GreenwoodからSPECOMPコードを取り寄
せる。上記について有賀委員が中心となって行うものとした。

5.その他
(1) Track Detectorの話
  PKAスペクトルに関係する話しとして、Track DetectorのCr-39の飛跡の深さを
原子間力顕微鏡での観察について喜多尾委員から紹介された。

(2) 次回のWG会合
  日時: 1995年10月5日(木)13:30〜17:30(高エネルギーWG会合と続ける)
    場所:  原研本部
  議題: 熱中性子のユーザーからの要求(真木委員)
      材料研究者へのアンケート結果の報告(大山委員)
      軽い核のDPA断面積(有賀委員)
      その他

                                以上