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              シグマ研究委員会・核データ専門部会
    PKAスペクトルワーキンググループ1995年度第3回会合議事録

日 時: 平成8年2月8日(木) 13:30〜17:30
場 所:  原研本部第5会議室
出席者: 有賀、池田、深掘(原研)、喜多尾(データ工学)、真木(日立)、
(敬称略) 村田(NFD)、渡辺(九大)、川合(東芝)、
     
配布資料:前回議事録案(平成7年10月5日)
     PKA-95-10 Experimental Data Testing of FENDL-1 KERMA Library(池田)
     PKA-95-11 γ線による原子のはじきだしについて(有賀)
          PKA-95-12 12Cの評価ならびにカーマファクタ計算の進捗状況(渡辺)
     PKA-95-13 KERMA2コードの整備と評価(川合)
     PKA-95-14 PKAスペクトルWGのH7年度作業報告ならびにH8年度作業計画
                     (川合)

議 事:
1.前回議事録の確認

2.カーマファクタの測定とJENDL-3のデータテスト
 配布資料PKA-95-10に基づいて、FNSにおけるカーマファクタの測定と、その測定
データによるJENDL-3とFENDL-1のデータテストが池田委員から紹介された。先ず、カー
マファクタは、中性子パルス(パルス長:3分)のon/off時の試料の温度変化を測定し
て求められた。解析においては、JENDL-3、FENDL-1ともにNJOYコードで処理され、中性
子とガンマ線のカーマファクタが求められた。Be, Cu, Zr, W, SS316の結果が示された
が、注目すべきものは以下の通りである。SS-316についてJENDL-3.2は測定値を良く再
現している。FENDL-1の中性子のカーマファクタは、JENDL-3.2より12%高い。一方、ベ
リリウムについては、JENDL-3.2は20%過小評価である。測定値を良く再現するFENDL-1
と比較すると、アルファ粒子のエネルギー吸収が過小のためと考えられる。それが改
訂されたJENDL-Fusion Fileに期待が持てる。

3.γ線による原子の弾き出しについて
 前回、真木委員が報告したガンマ線による軽水炉での材料損傷の問題の性格を明確
にするため、有賀委員から配布資料PKA-95-11に基づいてγ線による原子の弾き出し
の機構と定量的な評価法についての説明があった。基本的にはγ線と媒質原子との相
互作用で生じる電子と原子核との衝突により原子の弾き出しが起こる訳で、コンプト
ン散乱の寄与が最大であることが示された。上記の説明を受けてγ線による原子弾き
出し計算用のデータ整備の必要性を討議した。その結果、シグマ委員会のスコープ外
として当ワーキンググループのテーマとしないと結論した。

4.12Cの評価ならびにカーマファクタ計算の進捗状況
 渡辺委員から、配布資料PKA-95-12により前回会合以降の12Cの評価ならびにカーマ
ファクタ計算の進捗状況が報告された。すなわち、20 MeV以下の領域まで放出される
すべての粒子と反跳核のDDXを計算できるように、 JENDL-3.2のデータを用いて
SCINFUL/DDXコードを改良し、カーマファクタも含めて計算が行われた。
計算の結果、10〜20 MeV以下の弾性散乱外反応過程でもっとも大きな割合の(n,n'α)
 反応に対するJENDL-3.2の評価値が、Antokovic'の新しい実験と比べて15〜18 MeV領
域で過大評価していること、このことがカーマファクタの過大評価にも反映している
ことが示された。そして、今回のようにJENDL-3.2の問題点が明らかになった場合へ
のシグマ委員会対応について質問された。これに対して深堀委員から、シグマ委員会
としては現在のJENDL-3.2はこのまま凍結して使用するが、ベンチマークテストの結
果、使用経験や新データを考慮して改訂したものをまとめ、適当な期間を置いて
JENDLの改訂版を出す予定である旨、回答された。今後とも、こうした情報は、問題
点について整理して適宜事務局に報告することとした。

5.NとOの高エネルギー核データ評価
 村田委員からNとOの高エネルギー核データ評価の現状が報告された。評価に用い
るEXIFONコードについて、扱える粒子の種類を増やし、モデルの検討、特にα粒子以
外のクラスター放出モデルとして岩本−原田−佐藤モデルの組み込みなどの改訂作業
を継続、また、複合核形成断面積などの基礎データの計算、EXIFONでの試計算の結果
の吟味を行っている。問題点として、コードに組み込まれた式の中でα粒子のクラス
ター形成断面積に掛かる係数の値の物理的な意味が不明であると述べられた。また、
d,tなどについても直接過程の計算法を見直していると述べられた。計算モデルの検
討について、渡辺委員も協力することになった。

6. KERMA2コードの整備と評価
 川合委員から配布資料PKA-95-13により、ESPERANTコードのPKA/KERMAの2次ファイ
ル作成コードKERMA-2の整備と評価結果が報告された。コードは、PKAR-2コードで作
成されたPKA/KERMAの1次ファイル(PKAスペクトルと損傷関数スペクトルデータ)を
入力として、カーマファクタ、DPA断面積を計算し、ファイルとして作成する機能
を持つ。コードの検証として、 JENDL Fusion Fileの鉄とアルミニウムのデータを処
理し、結果をHowertonらによるカーマファクタ、RADHEAT-V4やDoranらによるDPA断面
積と比較し、良好な一致が得られたことが示された。これにより、実効的単一粒子放
出モデルの妥当性についても間接的に証明されたことになる。これで、ESPERANTが完
成した訳で、次年度からのファイル作成に活用して行くことが了承された。

6. H8年度作業計画検討
 川合委員から配布資料PKA95-14により、PKAスペクトルWGのH7年度作業の総括なら
びにH8年度作業計画(案)が説明され、それに基づいてH8年度作業計画が検討された。
メンバーについては、事前に岸田委員から抜けたいとの申し入れがあり、一人減であ
る。了承され、また合意された事項は下記の通りである。

6.1平成7年度の作業内容
(1) 軽核の中性子核データの評価(評価法が概ね決まり、進展があった)
  [エネルギー:10-5 eV − 50 MeV、
   評価対象量:中性子断面積、2次粒子および反跳原子のエネルギー・角度分布]
 評価完了: H, Li-6、C-12
 評 価 中: Be-9、Li-7、B,N、O
(2) ESPERANTコードの整備と評価
  PKARモジュール:PKA計算部分は完成し、FENDL用データを作成し、IAEAに送付。
  ただし、MT=201〜207 (粒子別の合成スペクトル)で与えているPKAスペクトルは、 
  NJOYでのデータ処理の観点から不都合であり、MT=219にまとめて格納したいとの
  データ入力形式修正の申し入れがあった。KERMAモジュールとの関係から、1次フ
  ァイルの形式は、これまでのものを踏襲する。
 KERMAモジュール:ほぼ、完成。PKARとの連携で一部改良の必要あり。
 両コードとも従来コードとの比較を行い、良好な結果を得た。
(3) 実験データの収集
 EXFORを手掛かりに調査。Kermaのデータを中心に収集し、整理した。
(4) ユーティリティーコード
  軽い核のDPA断面積の計算法を検討した。また、混合物質のDPA断面積の計算法に
 
 ついて、検討中である。(GreenwoodのSPECOMPコード利用)

6.2平成8年度作業計画
(1) 調査レポート
 ここ3ヶ年の調査結果についてのレポートを刊行する。また、ESPERANTコードのマニュ
 アルを著わす。
(2) 軽核の中性子核データの評価
 第1次評価対象核種を終了する。
(3) ライブラリーの作成と結果のレビュー
 JENDL Fusion File のデータならびに高エネルギー核データWGの成果を処理する。
 レビューには(4)の実験データとの比較を含む。
(4) 実験データの収集
 実験データのレビュー
(5) ユーティリティーコード
  軽い核のDPA断面積の計算プログラムとデータベース作成。
 混合物質のDPA断面積の計算法の推奨(GreenwoodのSPECOMPコード参考)
 データハンドブックの仕様検討

7.その他
 次回会合:新年度、作業進捗ならびに第9回ASTM会議への準備を考慮して適宜開催す 
      る。
                                     以上




    Masayoshi Kawai
    Nuclear Engineering Laboratory, Toshiba
    TEL: +81-(0)44-288-8150
    FAX: +81-(0)44-270-1806
    V-mail: 000094060897' 

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