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遅発中性子ワーキンググループ平成11年度第三回会合議事録

開催日時:平成12年3月17日(金) 13:30ー18:30(武蔵工大)

出席者:  青木繁明(三菱重工:田原代理),大澤孝明(近畿大),岡嶋成晃(原
研),親松和浩(愛知淑徳大),片倉純一(原研),桜井健(原研),瑞慶覧篤(
日立),中島健(原研),山根剛(原研),吉田正(武蔵工大)

配布資料:a.前回会合議事録(吉田委員)
     b.遅発中性子発生数ndの比較プロット(吉田委員)
     c.E.Fortの論文(ndの積分テストと推奨値)の概要(岡嶋委員)
     d.JENDL-3.2を用いた高速炉体系におけるbeff実験の実験解析
                       (桜井,岡嶋委員)
     e.FCAとMASURUCAのbeff実験解析に基づくJENDL-3.2の遅発中性子
       収率の修正(桜井,岡嶋委員)
     f.遅発中性子6群定数を変更することによるFCA反応度価値実験への影
響
		                       (桜井,岡嶋委員)
     g.U238のndの影響量評価(青木氏)
     h.JENDL-3.3pre/JENDL-3.2updtの遅発中性子データによる
       VHTRC-1炉心の実験データ処理(山根委員)
     i.炉周期ム反応度曲線(J3.2とJ3.3の比較)(中島委員)

 前回議事録(資料a:99/12/10)を確認したのち,以下の作業報告がおこなわれた。
引き続き今後の作業計画を審議し,次回会合までの作業内容を確認した。

1.作業経過報告

1)資料bに基づきU-235,U-238,Pu-239のndデータの現状を確認した。WGでは
U-238のndをthermalで0.045とした暫定ファイルを作成し作業を行っているが,
Fortはその論文でU-238のndに0.0485と大きな値を提唱しており,JENDL-3.3でこの
値をどう取るかが一つの論点となる。

2)上記のU-238のnd値を中心に,Fortの主張の内容が資料cに基づいて岡嶋委員よ
り紹介された。Fortの主張については,Fort,DユAngelo,Rowlands,岡嶋委員らの
間でe-mail上で活発な議論が行われているが,U-238のnd値については意見が大きく
分かれていると説明された。

3)桜井委員より資料d,e,fに基づき一連の説明がなされた。まず,暫定ファ
イルによる14個の高速炉系(FCA,MASURCA,SNEAK,ZPR)の解析結果が報告され
たが,暫定ファイルはPu/U-238混合炉心のbeffを過小評価する傾向が見られ,
U-238のnd暫定値0.045は下げすぎとの印象を与えた。資料eのnd修正計算の結果で
はU-238が0.0464,Pu-239は現状より大きめの0.00636という値(いずれもthermalで
の値)が示された。資料fでは片倉委員による6群セット(liとaiのセット:
1999/7)の妥当性が示唆された。

4)U-238のnd値変更に伴う軽水炉動特性への影響に関して,青木氏(田原委員代理
)より資料gに基づき報告された。実験誤差の範囲に収まってしまうため明確には
言えないが,U-238のnd暫定値0.045は低めであるとの印象を与えた。

5)VHTRC-1炉心の解析につき,山根委員より資料hに基づき報告された。6群定数
の改定(片倉;1999/7)はこの炉心のペリオド法およびロッドドロップ法による反
応度測定結果を3%程度増大させる。

6)TCA1.83U炉心とTRACYRun58の炉周期・反応度曲線が6群定数の改定によってど
う変化するかが中島委員より報告された。TRACYでは5)のVHTRC-1炉心と同じ傾向を
示すが,TCA1.83U炉心では逆の傾向を示すのでチェクを重ねることとなった。

7)遅発中性子総和計算と反応度方程式を結合した方程式を導出し,それに基づい
てprecursorの重要度をランク付けする方法が親松により提唱された。またその結果
からI-137,Br-88,Te-136の核分裂収率の精密測定の重要性が指摘された。

2.議事

 前回のWG会合で岡嶋委員より提唱された作業の進め方,Step 1)実効遅発中性子
割合の実験解析からまずndの値を決め,Step 2)ペリオド法やロッドドロップ法によ
る反応度測定実験解析結果から各群の遅発中性子割合と崩壊定数につき何らかの知
見を引き出してフィードバックする,という二段階法にそって今後も作業をおこな
う。Step 1)については様子が見えてきたが,軽水炉系が欠落しているためTCAのデ
ータを活用する方向で検討することとした。また,Step 2)についてはVHTRC-1,
TCA1.83U,TRACYRun58各炉心の解析を続行し,改訂された6群定数の当否を更に詰
めて行くこととした。
 また,以上の作業とレポートの作成のため,当WGをあと一年間継続することを
運営委員会に提案することで合意した。

3.次回会合までの作業

1)高速炉心体系によるndのadjustemntを更に継続し,入射中性子エネルギーの区
分と取り方等も含めて検討する(桜井,岡嶋委員)。
2)上記のAdjustmentにTCA炉心のいずれかを含められないかを含め,TCAデータを
nd値決定にフィードバックする可能性を検討する(中島委員)。
3)VHTRC-1,TCA1.83U,TRACYRun58各炉心の解析を続行し,改訂された6群定数の
当否を更に詰めて行く(山根,中島委員)。
4)上記の報告7)の内容を早急にまとめ,Progress in Nuclear Energyの遅発中
性子特集号の締め切りに間に合わせ投稿する(親松委員)。