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各 位

 昨年12/18に開催されました第2回医学用原子分子・原子核データWG
の議事録をお送りいたします。

原田康雄@昭和大学
[Minutes of the Medical Use Group]
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            シグマ研究委員会・医学用原子分子・原子核データWG 
                   平成12年度 第2回会合議事録(案)

開催日時:平成12年12月18日(月)13:30〜17:00
開催場所:昭和大学「昭和大学病院」17階 第4会議室
出席委員:伊藤 彬(癌研究会)、岩波 茂(北里大)、岡本浩一(日大)、尾川浩一
           (法政大)、古林 徹(京大炉)、原田康雄(昭和大)、山口恭弘(原研)
オブザーバ:加藤 洋(都立保健科学大)
欠席:上原周三(九大)、高田信久(電総研)、中井洋太(鈴鹿医療科学大)、松藤
           成弘(放医研)

配布資料:
MED-2000-2-1:本WGのWebページの開設及び今後の本WGの活動について(原田)
MED-2000-2-2:「長期的展望にたった核データ整備の必要性」に関するIAEA諮問家会
           合報告(岡本)

議 事:
1. 報告事項
1.1 交流促進について(古林)
 本WGの活動の方針(『核データニュース』通巻103号No.67(2000/10) p.70-71参 照)
に掲げた「医師との接点にいる人等との交流促進をする」ことの一つとして、放
射線技術学会に所属されている、東京都立保健科学大学・放射線学科・加藤洋先生に
オブザーバとして参加して戴く旨の説明と紹介があった。

1.2  第1回会合議事録の承認(古林)
 第1回会合の議事録は電子メールによって各委員に配布し確認された後、速報性を
持たせるためJNDCのWeb(URL=http://wwwndc.tokai.jaeri.go.jp/JNDC/JNDC_J.html)
や『核データニュース』通巻103号No.67(2000/10) p.86-87に公開されているが、この
会合での承認を持って最終承認とした。今後も、今回と同様に最終承認は次回の委員
会で行うことを原則とする。

1.3  JCO臨界事故における現場の2名の被曝線量分布の詳細計算、並びに2000年核デ
ータ研究会「放射線防護用データと核データ」の報告概要(山口)
1.3.1 原研と放医研の共同研究として、平成11年9月30日に発生したJCOの臨界事故で
重度に被曝した2名の作業者の全身の物理吸収線量(KERMA)分布を、作業状況を模
擬した作業者のファントム(MIRDファントム)を用いて中性子と光子について詳細に
計算評価した結果が報告された。また、体内で生成するNa-24について計算値と実測
値を比較し、計算値は実測値より30%程度高い値が得られたが、治療中の体液の補充
等による希釈効果を考慮すると両者はほぼ一致をしているものと考えられ、今回用い
た計算手法がほぼ妥当であったことが報告された。
 今回のような被曝事故による緊急医療には、一般の防護レベルを超えた精度の高い
線量評価が求められる。従来、このようなことを想定した人体ファントムや計算プロ
グラム等の整備は十分とは言えず、様々な被曝モデルに対応できる計算評価システム
の整備も重要な課題であるとの指摘があった。今回はほぼ確立されているMCNP計算コ
ードに加えて、まだ開発中のβ版MCNPXコードなども利用された。臨界超過を起こし
た攪拌漕内の核分裂密度分布やその表面から放出される中性子エネルギースペクトル
を精密に評価したこと、人体の姿勢を変えられる四肢可動型ファントムを取り入れた
こと等が報告された。
1.3.2 平成12年11月16-17日に開かれた核データ研究会において、放射線防護用核デ
ータについて、外部被曝と内部被曝の線量評価をゴールとしたテーマを中心に発表
し、放射線防護の基本となる換算係数の算定に核データや計算コード、ファントムを
含む種々の被曝モデルが重要であることが報告された。特に原研では近年の加速器施
設からの要求に応えるため、中性子と光子については10GeVまで、電子については
100GeVまでの主にこれまでKERMA換算係数が報告されていないエネルギー領域を対象
として研究を行っており、この算定に必要なデータニーズが高いことが述べられた。
また、本WGの活動方針(3)の定期的な情報発信の一環として、本WGに関係する医学分
野で必要とされるデータニーズについて、防護を絡めた放射線診断学や治療学に関連
する核データや原子分子データを紹介し、核データを生産加工している人達に適切に
伝えることを目的に活動している状況の一端を紹介したところ反響が大きかったこと
が報告された。(発表のabstractは http://wwwndc.tokai.jaeri.go.jp/nds/index_J.
html参照)。

1.4  私の今後の本WGでの活動について(原田)
 前グループリーダの活動の方針に沿って、一貫して1994年に出版された『医学物理
データブック』を補うデータの検討を続けてきた観点から、委員個人としての今後の
活動計画が述べられた。現在の医学物理データブックは1990年代の前半までのデータ
に基づいて作成されているが、主として自分が担当した項目について見ても、新しい
データを追加する必要があることから、不足しているデータや改訂を要するものがあ
ることが説明された。また、前回の山口委員による「放射線防護関連法案の改訂とそ
の見通しおよびそれにともなう問題について」と前々回の遠藤章氏による「内部被ば
く線量評価に用いる放射線データの現状」で指摘された、防護データ算定の基礎とな
る核データや計算方法に対する再評価の問題提起も背景にあるとのことであった。す
なわち、『医学物理データブック』の内部被曝線量評価(山口寛氏)では、核構造デ
ータ(崩壊データ)に関する一次放射線(α、β、γ線)および二次放射線(内部転
換電子、オージェ電子、特性X線、制動X線など)の平均エネルギーと崩壊あたりの
放出数が必要になるが、ENSDFからEDISTRで単純に出力できない現状であること、ま
た、ICRP publication 38: Radionuclide Transformations - Energy and Intensity
of Emissionsでも不十分なデータがある(遠藤章氏)ことである。さらに、特性X線
とオージェ電子、制動X線などについては『医学物理データブック』の基礎医学物理
のデータ整備でも同様に検討課題となっているとのことである。
 以上のようなことから、医学応用に対する要望としては、必要精度やICRP 38形式
の特殊目的ファイルの出力、法令で取り扱っている核種のうち、医学利用を念頭に置
いた核種の優先順位付けも本WGの役割の一つと考えられるとの説明があった。

2.討議事項
2.1 本WGのWebページ開設
 原田委員より本WGのWebページ開設の主旨、提案に至る動機、試作Webページについ
て、資料MED-2000-2-1(試作Webページからプリントアウトしたもの)に基づき説明
があった。現在のWebの構成は、ドキュメントスタイル、作成に至るいきさつ、ホー
ムページに相当する目次、本WG発足以降から今年度のWGの活動記録まで関係するもの
の記事(本年度分としては、1.山口委員の核データ研究会での発表、2.古林グループ
リーダの核データニュース記事、3.前回会合議事録、現WG委員の名簿)等からなって
いること、また、現在試験段階であるが、 URL=http://www.senzoku.showa-u.ac.jp/
dent/radiol/Prometheus/Committee/からアクセスできることが説明され、以下の意
見交換があった。

2.2  本WGのWebページについての意見
 電子メールによって事前にWG全委員に上記Webについてのアンケートを求めたが、
開設に反対の意見はなかった。当面試験的な運用として、シグマ研究会委員に本議事
録を通じて通知する方法で様子を見ることになった。
 会合当日に出された各委員の主な意見は以下の通りである。
(尾川) HTMLによる記録だけではなく、データやプログラムのftpサーバとしても機
能させるとよい。『医学物理データブック』で当時実現されなかったことはまさに、
この種の電子化であった。
(伊藤) Web公開は時代に合った手法である。本WGの年譜を作成するとよい。関連情
報のリンク集を整備すべきである。『医学物理データブック』の目次程度は載せた方
がよい。情報の所在を明らかにすることが大切である。
(岡本) よいことであり、進めてもらいたいが、あるところまでは、WGで行い、そ
の後は原研のサーバに委譲するのがよいだろう。情報が増えてくると、メインテナン
ス等が大変になることが予想される。
(山口) シグマ委員会の原研サーバに入れてもらい、メインテナンスもお任せする
のがよいだろう。
(岩波) メインテナンス等負担が大きくならないような対策が必要。
(古林) 時代に即した対応であるので大いに進めたいが、今後の展開を予想してこ
のWebの性格づけを明らかにして置くべきである。
(原田) 当面はWG内での情報交換のツールとしての役割を重視したい。

2.3  国際動向について(岡本)
 平成12年11月28〜12月1日ウィーンで開かれた「長期的展望にたった核データ整備
の必要性」に関するIAEA諮問家会合の報告(MED-2000-2-2)を著者の深掘氏の許可を
得て配布された。この会合の背景についてや、トピックスのトップが「医学利用(医
療用放射性同位元素の製造、粒子線による放射線治療、内部被曝線量評価)のための
核データニーズ」であったこと、開会挨拶として「アメリカの原子力関係予算のおよ
そ30%が非エネルギー利用である。これは多くの分野で、核データの広い応用分野の
利用が重要であることを示している。」旨のW.Burkart氏による発言の意義について
説明された。
 次にS.Qaim博士は「医薬品用核データニーズ」では、新しい製法、高い製造性と不
純物の少ない製造法をデザインするための核データが必要とされていることを報告し
ていること、また、T.Burrows博士は「内部被曝線量評価」に関して、内部被曝線量
評価のために必要な内部転換係数の計算には、分岐比、半減期、スペクトル、対生成
断面積、電子(β-、β+)捕獲データ、外部制動放射等の核データが必要となると説
明した上で、ENSDFはある程度これを満たしているが、最新のデータを使用すること
が重要である等が説明された。このようなことに関連して世界的な視点から、本WGの
来年度の招待講演者に、ICRUの委員でもある井口道生氏が推薦された。

2.4 次年度の計画
2.4.1 定期的な情報発信の一環として、尾川委員に核医学の観点から放射性医薬品に
関するWGでの検討資料を『核データニュース』へ投稿することを予定する。
2.4.2 「2001年核データ研究会」について、次年度の第一回会合で対応等を検討する。
2.4.3 「2001年科学技術のための核データ国際会議」を、医学利用関係者にも広く参
加を訴える。
2.4.4 招待講演予定者として、波戸芳仁氏と井口道生氏を検討する。

2.5 その他
2.5.1 委員の交代について
 グループリーダより来年度の委員について若干名の交代を考慮している旨の説明が
あった。
2.5.2 委員会の開催場所について
 昭和大学で開催することを基本とし、都合の付かないときは在京の委員で代替場所
を検討することを当面の方針とすることとした。

[以上]