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           シグマ研究委員会・天体核データ評価WG
               2002年度第2回会合議事録

日 時 : 2003年1月29日(水) 13:30 - 17:30
場 所 : 東京工業大学 原子炉工学研究所 1号館1階会議室
出席者(敬称略): 
    梶野 敏貴(国立天文台)、橘 孝博(早稲田大)、小浦 寛之(理研、講師)、
    河野 俊彦(九大)、大崎 敏郎(東工大)、関 暁之(茨大、講師)、市原 
    晃、千葉 敏(原研)

配布資料:
COSMO-02-7 : Nilsson-Sturtinsky Model(関講師)
COSMO-02-8 : 原子質量公式関連の進捗状況(小浦講師)
COSMO-02-9 : 中性子捕獲断面積計算(河野委員)
COSMO-02-10 : 計算コードシステム開発進捗状況(河野委員)
COSMO-02-11 : A(n,γ)B反応における正及び逆反応率の関係(梶野講師)
COSMO-02-12 : メラー氏の講演内容(千葉委員)

議 事 :

1. Nilsson-Strutinsky modelによるodd核のスピン・パリティ推定
 関講師が、資料COSMO-02-7及びOHPを用いてNilsson-Strutinsky modelによるodd核の原
 子核基底状態のスピン・パリティの推定法について解説を行った。現在は軸対称変形を
 仮定しており、Z<70, N<100の領域では実験との一致は50%程度であるが、スピン差
 が±1まで含めると60%程度の一致となる。重い領域ではエネルギーを最小にする変形
 度のサーチ法に問題があり一致は多少悪いが、今後、odd-odd核の取り扱いを含め早急
 に改良する予定である。

2. 市原委員自己紹介

3. 前回議事録確認

4. 進捗状況報告
4-1. 原子質量公式関連
 小浦講師が資料 COSMO-02-8及びOHPを用いて、KUTY質量公式の改良及び自発核分裂半減
 期の推定の現状の解説を行った。質量公式については、偶奇項の改良を行い、KTUY03質
 量公式として投稿中であるが、それによると質量としてZ,N≧2の領域での標準偏差が
 657.7keV、Snでも361.7keVと、KUTY00を上回り、Z,N≧8でもFRDM(95), HFBCS-1をはる
 かに凌駕する良い結果が得られた。自発核分裂半減期については、1次元のバリアー透
 過問題としてソビチェフスキーの式(Phys. Lett. B 224, 1(1989))に基づいて透過確率
 を計算した。ただし、その中に含まれるcollision frequencyとeffective massをパラ
 メータとして、実験値をグローバルに再現できるように決定した。現在は対称分裂を仮
 定しているものの、msからsecondオーダーの自発核分裂はr-processのダイナミカル部
 分に取り入れるべきであり、半減期の長いものもポストr-processで取り入れるべきも
 のとして重要であることが確認された。

4-2 中性子捕獲断面積計算
 河野委員が資料COSMO-02-9に基づいてγ線プロファイル関数として伝統的なBrink-Axel
 型を用いた場合とKopecky-Uhlによるgeneralized Lorentzianを用いた場合の中性子捕
 獲断面積の違いの可能性について解説。これらを絶対値として用いた場合はgeneralized 
 Lorentzianの方が断面積を小さく予測するが、ガンマ線強度関数を用いて規格化すると
 両者の差はなくなる。また、河野氏が用いている捕獲断面積計算法、特に非弾性散乱と
 の競合の入れ方についての解説がされた。

4-3 計算コードシステム開発進捗状況
 河野委員がCOSMO-02-10に基づいて計算コードシステムの現状について報告した。順調
 に進捗しており、今後の問題として核分裂を取り入れる、Direct/Semidirect capture
 でBCSのu,v因子を使うように改良中であることなどが報告された。

4-4 A(n,γ)B反応における正及び逆反応率の関係
 梶野委員が資料COSMO-02-11に基づいて、捕獲反応における正反応率と逆反応率の関係
 として、通常用いられている統計平衡と熱平衡を仮定した式を、detailed balanceから
 導けることを示した。ただし、Bose-Einstein分布をBoltzmann分布に近似できるという
 仮定が必要であり、それが成り立つ条件などについての議論が行われた。

4-5 メラー氏の講演内容
 千葉委員が、資料COSMO-02-12に基づいて、1月10日に原研東海研で行われたLANLのPeter 
 Moeller氏の講演内容の紹介を行った。主な内容は、β崩壊半減期の計算にGross Theory
 を用いてfirst forbidden遷移を取り入れた結果、r-processがスピードアップすること
 と、ガンマ変形を考慮して核分裂バリアーを計算すると場合によって2MeV程度バリアー
 が低下することなどである。また、原研の来年度体制について簡単に説明された。

5. 今後の体制
 来年度も引き続きWGを継続し、
  河野委員:断面積計算システムの構築と計算
  橘委員:質量公式、ベータ崩壊関係定数と反応断面積計算への基礎データ提供
  小浦講師:質量公式、核分裂関連データと反応断面積計算への基礎データ提供
 を中心に活動を行っていくこと等が議論された。WGは2〜3回程度開催する予定である。