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                        リアクター積分テストWG議事録(案)

日 時 : 2004年1月21日(水) 13:30〜17:30
場 所 : 日本原子力研究所東海研究所 第2研究棟2階221会議室
出席者 : 卞 哲浩(京大炉、宇根崎代理)、石川眞、羽様平(以上サイクル機構)、
       山本徹(原子力安全基盤機構)、小坂進矢(テプコシステムズ)、山本宗也(グロー
       バル・ニュクリア・フュエル・ジャパン)、瑞慶覧篤(日立)、高野秀機、大井川宏
       之、三好慶典、秋江拓志、中野佳洋、岡嶋成晃、奥村啓介、長谷川明、森貴正(以
       上原研)
発表者: 菊池司(原子力発電技術機構)、北田孝典(大阪大)、中川庸雄(原研)
欠席者: 岩崎智彦(東北大)、田原義壽、池田一三(以上三菱)、三田敏男(サイクル機
    構)

配布資料 :
資料 15-1-1  リアクター積分テストWG議事録(案) (秋江)
資料 15-1-2  核データの最近の話題 (中川)
資料 15-1-3  熱中性子炉を中心としたベンチマーク解析 (奥村)
資料 15-1-4  軽水炉MOX炉物理試験計画 MISTRAL/BASALA の解析 (菊池)
資料 15-1-5  熱中性子炉の感度解析 (北田)
資料 15-1-6  JNCにおける高速炉実験に関する積分テスト (羽様)
資料 15-1-7  Benchmark Test for JENDL-3.3 Library by Analysis of FCA Cores (岡嶋)

議 事 :
0) 前回議事録の確認 (資料15-1-1)
   "3) JENDL-3.3 のベンチマークテスト" のうち、"ZPPR-9 炉心のドップラー反応度が 
 JENDL-3.2 に比べても過小評価となった。これについて、各種補正係数が JENDL-3.2 の
 時のもので、当時はこれでモンテカルロ計算とよく一致したが、JENDL-3.3 の場合モン
 テカルロ計算は決定論的手法よりも ZPPR のドップラー反応度を高く評価するため、C/E
 値が1に近づくとコメントされた。" という部分について、このような事実はなかったは
 ずとのコメントがあり、事実関係を確認することになった。
    WG後の確認の結果、
  - この時のドップラー反応度の値は JENDL-3.2 を誤った重み関数で縮約した JFS-3-J3.2
   を用いた補正係数により算出した。
  - JNCでは、41keV以下に超微細群を適用した次世代炉定数補正も加えた結果、JENDL-3.3 
   によるドップラー反応度は JENDL-3.2 に比べ1%ほど C/E 値を改善している。
 等が明らかとなり、
  - JENDL-3.3 によるドップラー反応度が JENDL-3.2 よりさらに過小評価になったとい
   うのは事実と異なる。
  - 上記議事録にモンテカルロ計算と超微細群計算の混同がある。
 の2つの理由により、議事録の上記部分は削除することになった。ただし、2年前のWG会
 合議事録はすでに公開されているので、今回の議事録をもって改定版に代えることとす
 る。

1) 核データの最近の話題 (原研・中川氏、資料15-1-2)
  U-235 と U-238 について、テスト用に一部公開されているデータを元に ENDF/B-VII 
 の評価について ENDF/B-VI.8 や JENDL-3.3 との違いが説明された。ただし、ENDF/B-
 VII のデータは随時改訂されているとのこと。
  U-235 遅発および即発中性子データでは、即発核分裂スペクトルがENDF/B-VI.8 や 
 JENDL-3.3 と比べ硬くなった。核分裂断面積はほとんど変化はないが、捕獲断面積が
 30keV以上の領域で JENDL-3.3 と異なる。
  U-238については、低濃縮U炉心での増倍率過小評価傾向の原因の一つとして、熱中性
 子領域の U-238 の捕獲断面積が大きすぎる可能性が指摘され、現在の評価値2.72バー
 ンに対し、実験値の中でも最も小さな2.68バーンが信頼できる値との議論がある。この
 議論も反映し、分離共鳴を20keVまで拡張した共鳴パラメータが ORNL で評価された。ま
 た、フランス(BRC)でも理論計算を重視した評価が行なわれるなど、現在いくつかの新し
 い評価がある。核分裂断面積では、500keV以上で BRC の評価が他と若干異なる。捕獲断
 面積は各評価間にMeV領域で差異が見られる。非弾性散乱断面積については、他のライブ
 ラリと比べ ENDF/B-VI の5MeV付近の全散乱断面積が大きかったが、ENDF/B-VII は 
 JENDL-3.3 に近づいている。ただし、個々の励起レベルはかなり異なる。(n,2n)断面積
 は JENDL-3.3 がやや小さい。平均散乱角余弦にも違いが見られる。
  また、JENDL-3.3 の Am-241 データに編集ミスがあった。核分裂中性子の角度分布と
 核分裂スペクトルに関するもので、改定版を WWW 上で公開している。Amについて議論
 する場合、改訂版のデータを用いて効果がある時は、新しいデータを使用したと言及し
 てほしいとのこと。

2) 熱中性子炉を中心としたベンチマーク解析 (奥村委員、資料15-1-3)
  これまでのベンチマークの他に、KRITZ やICSBEP(International Criticality 
 Safety Benchmark Evaluation Project)からCRX 等の炉心を加えてベンチマーク計算を
 実施した。
  U炉心では、ライブラリによらず、低濃縮からU濃縮度が高くなるにつれて増倍率の計
 算値が大きくなる傾向がはっきり見られた。検討の結果、炉心のη値の計算値が増倍率
 と同様のU濃縮度依存性を示した。この依存性をU-238捕獲断面積のみで説明するとすれ
 ば、熱中性子断面積(2200m/s値)は2.64バーン程度である必要がある。
  MOX炉心では、燃料格子のピッチが大きくなり、水/燃料比が大きくなると増倍率の計
 算値が大きくなる。また、兵器級Puを用いた炉心 KRITZと CRX で増倍率の差はあまり
 なかったのに対し、原子炉級Puの炉心 TCAと MISTRAL では増倍率の差異が大きい。
 TCA と MISTRAL ではPuの組成や Am-241 の割合が異なり、高次のPu同位体やAmが増倍
 率に影響を及ぼしていることが考えられる。
  今後信頼できるベンチマーク問題の選定を実施する。U炉心では増倍率のU濃縮度依存
 性を検討し、U-235 や U-238 断面積データへのフィードバックをはかる。MOX炉心では
 まず、兵器級Pu炉心の検討から Pu-239断面積、さらに原子炉級Pu炉心の検討より高次
 のPu同位体と Am-241 断面積評価へフィードバックを目指す。また、核種生成量WGと協
 力して照射後試験解析を行ない、MAやFP断面積の検討を行ないたい。
  高速炉と同様な感度解析は熱炉では難しいとしても、核分裂断面積等主要なデータに
 対してだけでも実施できれば有用な結果が得られるのでは、とのコメントがあった。ま
 た、ρやδ等の反応率比の測定値がある炉心はないかとの質問に対し、いくつかの炉心
 にはそのようなデータがある、現在全日本的にデータベース作りを行ない評価・整理を
 行なっているので、整理済みのものから順次解析して行きたいとの答えがあった。
  その他、STACY 解析における体系のモデル化、Gd濃度に対する増倍率依存性等の議論
 があった。

3) 軽水炉 MOX ベンチマーク (NUPEC・菊池氏、資料15-1-4)
  これまでの MISTRAL 炉心解析に加え、BASALA 計画の炉心1と2についての解析も実施
 した。SRAC と MVP コードを用い、臨界性、出力分布、反応度価値(ボイド、Gd2O3、B4C、
 Hf、ウォーターロッド)、等温温度係数、積分ほう素価値等を評価している。MVP による
 増倍率の計算値は、JENDL-3.1、JENDL-3.2、JENDL-3.3、ENDF/B-VI、JEF-2.2 の全ての
 ライブラリで、全MOX炉心である MISTRAL 2, 3, 4, BASALA 1 の増倍率を高く評価した。
 資料に記載はないが BASALA 2 の結果も BASALA 1 と同程度とのこと。JENDL-3.3 は 
 JENDL-3.2 と比べて、UO2炉心では増倍率を0.5%程度、MOX炉心では0.1%程度低く評価す
 る。
  全MOX炉心の増倍率が高く評価されることについて、臨界性の実験誤差は小さいこと
 が評価されている。用いたPuの組成は核分裂性Puが65-68%、Pu-240 が20%以上含まれ、
 Pu-240 の断面積データの影響が考えられる。他に原子炉級Puを用いた軽水炉実験はな
 いかとの質問に対して、TCA以外ないこと、高富化度MOXとしては MISTRAL や BASALA 
 が唯一であるとの答えがあった。

4) 熱中性子炉の感度解析 (大阪大・北田氏、資料15-1-5)
  軽水減速U燃料体系における臨界予測のU濃縮度依存性について、感度解析による原因
 核種・反応・エネルギー領域の検討を行なった。解析した炉心は TRX、B&W、DIMPLE の
 各炉心で、U濃縮度範囲は TRX の1.3wt.%から、DIMPLE7 の7wt.%までである。増倍率に
 U濃縮度依存性はあるものの水/燃料比依存性は見られないことから、今回は U-235 と 
 U-238 の感度係数のみに着目した。解析は JENDL-3.2 を主に用いた。
  その結果、増倍率に対する感度係数として、U-238捕獲断面積と核分裂スペクトルに
 は強い濃縮度依存性が、U-235 の捕獲断面積と核分裂スペクトル、U-238 核分裂断面積
 に弱いU濃縮度依存性が見られた。感度係数と断面積誤差による増倍率への寄与評価等
 から、0.1eV以下のエネルギー領域での U-238 の捕獲断面積が、増倍率のU濃縮度依存
 性の主要因と考えられる。また、核分裂スペクトルが JENDL-3.2 から JEF-2.2 のデー
 タ以上にさらに硬くなれば要因となり得る。今後、水/燃料比の異なるTCA 体系等ケー
 スを追加して検討すべきと考えている。
  U-238 捕獲断面積だけでは TRX 炉心の増倍率過小評価の説明にはまだ足りない、核
 分裂スペクトルが要因となるなら非弾性散乱断面積も要因となり得る、熱領域の反応は
 S(α,β) の影響が重要だがライブラリ間で違いがない、等の議論があった。

5) 高速炉ベンチマーク (羽様委員、資料15-1-6)
  前回WG以降実施、整理した積分ベンチマークテスト、BFS、MOZART、SEFOR が紹介さ
 れ、JNC で実施した JENDL-3.3 ベンチマークテストのまとめが報告された。
  BFS 炉心解析では臨界性、Naボイド反応度、制御棒価値、反応率比、核分裂率分布、
 U-238 ドップラー反応度、サンプル反応度価値等が測定された。臨界性では、JENDL-
 3.3 が JENDL-3.2 より過小評価傾向が大きくなった。Uの多く含まれている炉心で 
 JENDL-3.3 と JENDL-3.2 の差異が大きく(0.6%dk程度)、感度解析から U-235、特にkeV
 領域の捕獲断面積のデータが差異の主な原因であることが示された。反射体つき炉心で
 は、反射体に入った部分で核分裂反応率分布の予測精度が悪い。これはモンテカルロ計
 算でも同様であった。Np を装荷した BFS-67 シリーズの実験解析も実施し、Np の存在
 による正のNaボイド反応度の増加が解析でも再現された。その他臨界性、制御棒価値、
 反応率比等、Np の存在による解析精度の悪化は見られていない。
  MOZART 実験解析では、MZA、MZB 炉心の臨界性の解析値が若干(0.3%Δk程度)JENDL-
 3.2 より増加し、C/Eが1に近づいた。SEFOR や JUPITER等、他の炉心解析全体をまとめ
 て、臨界性は実験値±0.5%、Naボイド反応度は±10%、制御棒価値は±5%の範囲内で評
 価できている。現在解決すべき課題としては第一に U-235、特に分離共鳴領域の捕獲断
 面積データがあげられる。他には、BFS 炉心反射体領域での核分裂率分布の予測精度が
 ある。
  U-235 データに関して、FCA U炉心の解析結果はどうかとの質問があった。(次項参照)

6) FCA ベンチマーク (岡嶋委員、資料15-1-7)
  FCA IX、X、XIX の各炉心の解析を行なった。IX-1 から IX-6 炉心はグラファイト、
 あるいはSSを含む93% 濃縮U炉心、IX-7 は20%濃縮U炉心、XIX-1 炉心も IX-1 と同様の
 炉心組成を持つU炉心である。
  臨界性を見ると、BFS や大型炉模擬炉心に近い、より軟らかいスペクトルを持つ IX-
 1 炉心と XIX-1 炉心において JENDL-3.3 による計算値の過小評価が大きく、IX 炉心
 シリーズでは IX-2、IX-3 とスペクトルが硬くなるにつれて、臨界性のC/E値は大きく
 なって行く。その他反応率比の解析結果が紹介された。
  JENDL-3.3 と ENDF/B-VI.8 の臨界性予測値の差異に関して、両ライブラリの U-235 
 の共鳴パラメータは、30keV以上で違いがある、U-238の影響も考えられる、詳細に検討
 するには感度解析が必要、等の議論があった。また、FCA U炉心の実験でボイド反応度
 測定や、C25 に関する反応率比測定データはないかとの質問があった。どちらの測定も
 行なっていないとのこと。

7) 今後の予定
  特に、
  - U-235 と U-238 データ、および
  - 軽水炉MOX炉心の臨界性に
 ついて集中的に検討する必要がある。
  WGメンバー間の意見交換を密にするため、メーリングリストの設置が提案された。WG
 後、さっそく核データセンター深堀氏よりメーリングリスト立上げの連絡があった。