高速増殖炉や、加速器駆動炉のような革新的原子炉システムを設計する場合、
従来の軽水炉での反応を支配する熱領域の中性子だけでなく、
熱外中性子から速中性子までの反応の寄与を考慮しなければなりません。
特に、マイナーアクチノイドや長寿命核分裂生成核種の速中性子捕獲断面積が、
核変換炉など革新炉を設計するために必要とされています。
しかしながら、実験的に測定された中性子断面積は、核種・エネルギーによっては信頼性が充分でなかったり、
全く測定データがないことがあります。 これらを含めた中性子断面積の測定を、原子力機構3号炉(JRR-3)、
産総研などで行っています。 さらに、J-PARC物質生命科学実験施設に建設した中性子核反応測定ビームライン
( ANNRI )を使い、
中性子反応断面積を測定するための装置開発や断面積測定実験を行っています。
・TOF法による共鳴領域での中性子捕獲断面積測定
核変換炉や将来の原子炉を設計するためには、
MA,FP核のeV-keVの中性子捕獲断面積が必要とされています。
こうした共鳴領域での中性子捕獲断面積測定に飛行時間法( TOF法 )を用います。
私たちは、より高感度・高精度にこれらの核データを取得するために、4πBGO検出器の開発を行ってきました。
さらに、より高度な測定をするために、全立体角Geスペクトロメータの開発を進めています。
そして、これを用いた中性 子捕獲断面積測定をJ-PARCに建設した
ANNRI 施設で行っていく予定です。
・放射化法による熱中性子捕獲断面積測定
核分裂生成物(FP)核種、マイナーアクチノイド(MA)核種が、
中性子とどのくらいの確率で反応するかを正確に知るためには、
熱中性子捕獲断面積及び共鳴積分の精度の高いデータが必要です。
しかしながら、FP,MA核種の中には、データが全く存在しないか、
存在しても測定精度が低いものがあります。基礎的な核データを整備するために、
放射化法を用いて精密な測定を実施しています。